春分の日が国民の祝日として制定された理由は、主に以下の3つの要素が複雑に絡み合っています。
春分の日が国民の祝日として制定された訳
1. 「国民の祝日に関する法律」による明文化
春分の日は、1948年（昭和23年）に公布・施行された「国民の祝日に関する法律（祝日法）」によって制定されました。
この法律の第2条では、春分の日の趣旨を**「自然をたたえ、生物をいつくしむ。」**と明記しています。
これは、春分の日が昼夜の長さがほぼ同じになり、本格的な春の訪れを感じさせる日であることから、自然の恵みや生命の息吹に感謝する意味合いが込められています。
2. 宮中祭祀「春季皇霊祭」に由来
春分の日は、戦前の「春季皇霊祭（しゅんきこうりょうさい）」という宮中祭祀に深く由来しています。春季皇霊祭は、歴代の天皇や皇族の霊を祀る重要な儀式でした。戦前は、この春季皇霊祭が祝祭日とされていました。
第二次世界大戦後、GHQ（連合国軍総司令部）の占領政策により、天皇中心の国家体制を解体する動きの中で、宮中祭祀に由来する祝祭日の多くが廃止・変更されました。しかし、春季皇霊祭は、その歴史的背景と国民に広く定着していた慣習を考慮し、「春分の日」と名称を変え、趣旨も「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」と変更されて、国民の祝日として残されました。
3. 「お彼岸」の慣習との結びつき
春分の日は、仏教の「お彼岸」の中日（ちゅうにち）にあたります。
お彼岸は、春分の日と秋分の日を中日とする前後3日間、合計7日間の期間を指し、この時期に先祖供養やお墓参りをする習慣が日本に古くからあります。
仏教では、煩悩に満ちた現世を「此岸（しがん）」、煩悩から解放された極楽浄土を「彼岸（ひがん）」と呼びます。
春分の日は、太陽が真東から昇って真西に沈むため、此岸と彼岸が最も通じやすくなる日と考えられてきました。このため、この日に先祖を供養すると極楽浄土に行けると信じられ、お墓参りをする習慣が広く定着しました。
このように、春分の日は、法律によって「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」と定められた趣旨に加え、歴史的な宮中祭祀である春季皇霊祭からの流れ、そして仏教の「お彼岸」という国民的慣習が複合的に影響し合って、今日の国民の祝日として制定されました。
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