結論から言うと、ヒグマの方がツキノワグマよりも人間にとって危険性が高いと一般的に考えられています。
ヒグマとツキノワグマ どちらが危険?
これは、両者の生息地や行動、そして体格の違いに起因します。
ヒグマの危険性が高い理由
- 圧倒的な体格と力:
- ヒグマはツキノワグマの2〜3倍以上の大きさと体重があり、日本最大の陸上動物です。
- その体格からくるパワーは圧倒的で、一度人間を攻撃すると、致死率はツキノワグマに比べて格段に高くなります。過去の事例では、顔面や頭部を執拗に攻撃されることが多く、致命傷につながりやすいとされています。
- 食性の違い:
- ヒグマはツキノワグマよりも肉食の傾向が強く、シカなどの大型哺乳類を捕食することもあります。
- 一度人間を襲って食害した場合、その味を覚え、再び人間を襲う「人食いグマ」になる可能性があります。北海道の三毛別羆事件は、その典型的な例です。
- 性格と行動:
- ツキノワグマが比較的臆病で人間を避ける傾向が強いのに対し、ヒグマは好奇心旺盛で、人間に対して大胆な行動をとることがあります。
- 特に子連れのメスグマは、わが子を守るために非常に攻撃的になります。また、人間が獲物や食料を奪おうとすると、排除しようとして襲ってくることもあります。
ツキノワグマの危険性
ツキノワグマも決して危険でないわけではありません。
- 人身被害の件数: ツキノワグマは本州の広い範囲に生息しているため、人間との遭遇機会が多く、人身被害の件数自体はヒグマによる被害件数よりも多くなる傾向があります。特に、秋にドングリなどが不作の年には、食料を求めて人里近くに出没し、被害が増加することがあります。
- 攻撃の可能性: ツキノワグマも、不意の遭遇で驚いたり、子グマを守ろうとしたり、食べ物を持っている人間を威嚇したりする際に、人間を攻撃することがあります。しかし、その場合でも、多くは威嚇が目的であり、攻撃が短時間で終わるケースが多いとされています。
まとめ
ヒグマ | ツキノワグマ | |
---|---|---|
生息地 | 北海道 | 本州、四国 |
体格 | 非常に大きい | 比較的、小型 |
攻撃の危険性 | 非常に高い(致死率が高い) | 中程度(被害件数は多いが、致死率は低い) |
主な攻撃理由 | 子グマの防衛、食料の排除、好奇心、人食いグマ化 | 不意の遭遇、子グマの防衛、食べ物への執着 |
したがって、遭遇した際の致死率や攻撃性、体格からくる破壊力においては、ヒグマの方がツキノワグマよりも圧倒的に危険性が高いと言えます。
しかし、どちらのクマも野生動物であり、遭遇すれば命に関わる危険があることに変わりはありません。
クマの生息地に立ち入る際は、種別に関わらず、最大限の注意と対策が必要です。
日本に生存するクマの種類と特徴

日本には、主にヒグマとツキノワグマの2種類のクマが生息しています。それぞれ生息地、体の大きさ、食性、行動パターンなどが大きく異なります。
1. ヒグマ (Ursus arctos)
- 生息地: 日本では北海道のみに生息しています。
- 特徴:
- 体格: 日本に生息する陸上哺乳類の中で最大で、オスの体長は2m以上、体重は300kgを超える個体もいます。メスはオスよりやや小さいものの、こちらも大型です。
- 外見: 肩が盛り上がっていて、全体的にがっしりとした体型です。体毛の色は茶色から黒、金色まで個体差があります。
- 食性: 雑食性ですが、ツキノワグマに比べて肉食の傾向が強いです。植物の葉や木の実、昆虫、魚(特にサケ)、シカの幼獣や死骸なども積極的に食べます。
- 行動: 学習能力が高く、一度食べ物の味を覚えると、それを求めて人里に繰り返し出没することがあります。人を避ける傾向はありますが、追い詰められたり、子連れのメスに出会ったりすると非常に攻撃的になります。また、自分で捕獲した獲物に対する執着心が強く、横取りしようとすると危険です。
- 冬眠: 冬季には冬眠します。
2. ツキノワグマ (Ursus thibetanus)
- 生息地: 本州、四国に生息しています。九州では絶滅したとされています。
- 特徴:
- 体格: ヒグマに比べて小型で、体長は1.2m〜1.5m程度、体重は60kg〜150kg程度です。ヒグマと比べると、体の大きさが半分以下となります。
- 外見: 名前にもなっている通り、胸に三日月型の白い模様があるのが最大の特徴です。ただし、この模様がない個体もいます。
- 食性: ヒグマと同じく雑食性ですが、植物食への依存度が非常に高いです。ドングリやクリなどの木の実、山菜、昆虫、蜂蜜などを主に食べます。秋には冬眠に備えて木の実を大量に食べます。
- 行動: 臆病で警戒心が強く、基本的に人との接触を避けます。しかし、食べ物が不足する年には、食料を求めて人里近くまで行動範囲を広げることがあり、遭遇する機会が増えます。
- 木登り: 木登りが非常に得意で、木の上の果実や新芽を食べるために、枝を折りながら登る習性があります。この時にできる「クマ棚」は、生息の証拠となります。
- 冬眠: 冬季には木のうろや岩穴などで冬眠します。冬眠中に子を出産します。
両者の主な違いの比較
ヒグマ | ツキノワグマ | |
---|---|---|
生息地 | 北海道 | 本州、四国 |
体格 | 日本最大の陸上哺乳類。オスは体長2m以上、体重300kg超も | ヒグマより小型。体長1.2m〜1.5m、体重60kg〜150kg程度 |
外見 | 肩が盛り上がったがっしりした体型 | 胸に三日月型の白い模様(個体差あり) |
食性 | 雑食性(肉食の傾向が強い) | 雑食性(植物食への依存度が高い) |
性格 | 警戒心が強いが、追い詰められると攻撃的 | 臆病で人を避ける傾向が強い |
運動能力 | 時速50kmで走る。泳ぎも得意 | 木登りが得意。時速40kmで走る |
クマに遭遇しない方法

クマに遭遇しないためには、クマの行動パターンや習性を理解し、人間側の注意深い行動が非常に重要です。
以下の対策を徹底することで、遭遇リスクを大幅に減らすことができます。
1. 入山前の情報収集と準備
- クマの出没情報を確認する: 地方自治体や林野庁、登山情報サイトなどで、事前にクマの目撃情報や出没情報がないか確認しましょう。危険な場所には近づかないことが最も重要です。
- 複数人で行動する: クマは単独でいる人間よりも、複数人で行動している人間を避ける傾向があります。できるだけ単独行動は避け、複数人で入山しましょう。
- クマ対策アイテムを携帯する:
- クマ鈴: 歩くたびに音が鳴り、クマに人間の存在を知らせる最も一般的な方法です。
- ラジオ: ラジオを携帯して鳴らすのも効果的です。
- クマ撃退スプレー: 遭遇してしまった際の最終的な防衛策として、必ず携帯しましょう。いざという時にすぐに使えるよう、リュックサックなどにしまわず、腰のベルトや胸のポケットなど、すぐに取り出せる場所に身につけることが重要です。
2. 山の中での行動の工夫
- 音を出す: クマに人間の存在を知らせることが一番の目的です。クマ鈴を鳴らすだけでなく、時々大声で会話したり、笛を吹いたりして、常に音を出すように心がけましょう。特に、見通しの悪い場所や、沢沿い、風の強い日などは、クマも人間の存在に気づきにくいため、特に注意が必要です。
- 行動時間を考慮する: クマの活動が活発になるのは、早朝や夕方、霧が出ている時です。これらの時間帯を避けて行動すると、遭遇リスクを減らせます。
- クマの痕跡に注意する: クマのフンや足跡、爪痕、クマ棚(クマが木の枝を折って作った食べ台)などを見つけたら、その周辺はクマの行動範囲である可能性が高いです。そのような場所では引き返すか、特に慎重に行動しましょう。
- コースを外れない: 山菜採りなどで道なき道を歩くのは、クマに遭遇するリスクが非常に高まります。定められた登山道や遊歩道から外れないようにしましょう。
3. クマを引き寄せないための注意
- 食べ物や生ゴミの管理を徹底する: クマは嗅覚が非常に優れており、食べ物の匂いに強く引き寄せられます。
- ゴミは必ず持ち帰る: 登山やキャンプで出た食べ残しや生ゴミは、たとえ小さなものでも絶対に放置せず、密閉して持ち帰りましょう。
- 食料の保管: キャンプなどでテントを張る際は、食料をテント内に置かず、クマが届かない場所に吊るしたり、専用のコンテナに保管したりしましょう。
- 野生動物に餌を与えない: 一度人間の食べ物の味を覚えたクマは、再びそれを求めて人里に近づくようになり、結果的に人との衝突が増えてしまいます。絶対に野生動物に餌を与えないでください。
これらの対策を徹底することで、クマとの不要な遭遇を避け、より安全に自然を楽しむことができます。
万が一、クマと遭遇してしまった場合の対処法も、事前に調べておくことも大切です。
クマと出会ってしまった時の対応法
日本で遭遇するクマは、ヒグマかツキノワグマのどちらかです。
クマに出会ってしまった時の対応法
1. クマに気づかれていない場合
クマがあなたの存在に気づいていない場合は、静かにその場から立ち去りましょう。 背中を向けずに、クマから目を離さず、ゆっくりと後ずさりしてください。大声を出したり、走って逃げたりするのは厳禁です。
2. クマに気づかれてしまった場合
クマに気づかれてしまったら、決して走ってはいけません。クマは本能的に逃げるものを追いかける習性があります。
- 落ち着いて行動する: パニックにならず、静かに落ち着きましょう。
- ゆっくり後ずさりする: クマに背中を向けずに、ゆっくりとその場を離れます。
- 持ち物を静かに置く: クマが持ち物に興味を示している間に、安全な距離まで離れることができるかもしれません。
- クマに話しかける: クマに「クマさん、こっちへ来ないで」などと静かに話しかけることで、クマが人間の存在を認識し、危険ではないと判断する場合があります。
絶対にやってはいけないこと
- 背を向けて走って逃げる: クマは逃げるものを追いかける習性があるため、走るとかえって危険です。
- 大声を出す、石を投げるなど、クマを刺激する行為: クマを驚かせたり、怒らせたりすると、攻撃されるリスクが高まります。
- カメラのフラッシュを焚く: クマを驚かせるため、これも危険な行為です。
遭遇しないための事前対策
- クマ鈴やラジオなどを携帯する: 自分の存在をクマに知らせ、向こうから近づいてこないようにします。
- 食べ物や生ゴミは持ち帰る: クマの嗅覚は非常に優れているため、食べ物の匂いを残さないようにしましょう。
- 複数人で行動する: 人数が多いほど、クマは近づいてきにくくなります。
クマに遭遇することは稀ですが、もしもの時のために、これらの知識を覚えておくことが少しでも危険回避することが大切ですね。
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