台風による被害の大きさは、死者・行方不明者数、負傷者数、家屋の損壊・浸水、農業・経済被害など、複数の要因によって評価されています。
明確な「被害が多かった年ベスト10」を一覧で示すのは難しいですが、特に甚大な被害をもたらした台風やその年の例を挙げてみました。
以下に、日本の台風災害史において特に被害が大きかったと認識されている台風、およびその発生年をいくつかご紹介します。
台風被害が多かった年
昭和の三大台風 これらの台風は、戦後の復興期に発生し、甚大な人的・物的被害をもたらしました。
- 伊勢湾台風(1959年)
- 死者・行方不明者:4,697人、被災家屋:500,000棟以上
- 紀伊半島から東海地方を中心に、暴風と高潮による甚大な被害が発生しました。日本の台風災害史上、単一の台風による死者・行方不明者数が最も多いとされています。
- 室戸台風(1934年)
- 死者・行方不明者:2,702人、家屋損壊:90,000棟以上
- 高知県室戸岬に上陸後、関西地方を縦断。特に大阪府では強風による建造物被害と高潮による浸水被害が甚大でした。
- 枕崎台風(1945年)
- 死者・行方不明者:2,473人
- 第二次世界大戦終戦直後に襲来し、戦時の伐採により弱くなった山々で土砂災害が多発。原爆被災直後の広島県でも甚大な被害を受けました。
その他の大きな被害をもたらした台風・年
洞爺丸台風(1954年)
- 死者・行方不明者:1,361人(洞爺丸の遭難による死者が多数を占める)
- 日本海を進み、青函連絡船洞爺丸が転覆するなど、海難事故が多発しました。
カスリーン台風(1947年)
- 死者・行方不明者:1,077人
- 関東から東北地方にかけて大雨による河川の氾濫が発生し、広範囲で浸水被害が出ました。
狩野川台風(1958年)
- 死者・行方不明者:888人
- 静岡県を中心に関東全域に豪雨による浸水被害が拡大しました。
平成16年台風第23号(2004年)
- 死者・行方不明者:98人
- 近年では、人的被害が大きかった台風の一つです。
平成23年台風第12号(2011年)
- 死者・行方不明者:82人
- 西日本から東北地方にかけての広い範囲で、暴風や記録的な大雨をもたらし、河川の氾濫や土砂災害が多発しました。
令和元年東日本台風(台風第19号・ハギビス、2019年)
- 死者・行方不明者:99人(2020年10月13日時点の消防庁報告)
- 被害総額は約1兆8,800億円と、津波以外の単一の水害としては統計開始以来最大の被害額となりました。東日本を中心に記録的な大雨となり、多くの河川で氾濫が発生しました。
上記は主な例であり、他にも各地で甚大な被害をもたらした台風は多数存在します。
特に近年は、気候変動の影響により、個々の台風がもたらす大雨や暴風の規模が大きくなる傾向にあり、防災対策の重要性が増しています。
過去に台風が多く発生した年ベスト10は?
気象庁の統計データによると、過去に台風が多く発生した年ベスト10は以下の通りです。
順位 | 年 | 発生数 |
---|---|---|
1 | 1967年 | 39個 |
2 | 1994年 | 36個 |
2 | 1971年 | 36個 |
4 | 1966年 | 35個 |
5 | 1964年 | 34個 |
6 | 1989年 | 32個 |
6 | 1974年 | 32個 |
6 | 1965年 | 32個 |
9 | 2013年 | 31個 |
9 | 1992年 | 31個 |
9 | 1988年 | 31個 |
9 | 1972年 | 31個 |
9 | 1958年 | 31個 |
複数の年が同数で同順位になっている場合があります。
全世界で被害が多かった台風ベスト10

全世界で被害が多かった台風(熱帯低気圧全般を含む)のランキングは、人的被害と経済被害で大きく異なります。特に過去の記録では、人的被害に関する情報が多く残されています。
人的被害が多かった台風(熱帯低気圧)ベスト10
死者・行方不明者数に基づくランキングでは、古い時代の災害が上位を占める傾向にあります。
これは、当時の防災体制やインフラが未発達であったこと、人口密集地での災害が多かったことなどが影響しています。
順位 | 名称 / 被災地 | 発生年 | 死者・行方不明者数(推定) |
---|---|---|---|
1 | グレートボーラサイクロン(バングラデシュ) | 1970年 | 300,000 – 500,000人 |
2 | フーグリー川サイクロン(インド、バングラデシュ) | 1737年 | 300,000人 |
3 | ハイフォン台風(ベトナム) | 1881年 | 300,000人 |
4 | コリンガサイクロン(インド) | 1839年 | 300,000人 |
5 | バッカガンジサイクロン(バングラデシュ) | 1584年 | 200,000人 |
6 | グレートバッカガンジサイクロン(バングラデシュ) | 1876年 | 200,000人 |
7 | チッタゴンサイクロン(バングラデシュ) | 1897年 | 175,000人 |
8 | スーパー台風ニーナ(中国) | 1975年 | 171,000人 |
9 | サイクロン02B(バングラデシュ) | 1991年 | 138,866人 |
10 | サイクロン・ナルギス(ミャンマー) | 2008年 | 138,366人 |
注記: これらの数字は推定値であり、情報源によって多少異なる場合があります。
特に古い災害については、正確な死者数を特定することが困難です。
経済被害が多かった台風(熱帯低気圧)
経済被害のランキングは、インフレ調整の有無や、対象とする熱帯低気圧の範囲(ハリケーン、サイクロン、台風の全てか、特定の地域か)によって大きく変動します。
近年は、インフラの整備が進んだ地域での被害額が大きくなる傾向にあります。
一般的に、経済被害が最も大きかった熱帯低気圧として挙げられるのは、アメリカ合衆国を襲ったハリケーンです。
- ハリケーン・カトリーナ(2005年): 約1250億ドル(インフレ調整後、さらに高くなる場合あり)
- ハリケーン・ハービー(2017年): 約1250億ドル
- ハリケーン・イアン(2022年): 約1120億ドル
- ハリケーン・マリア(2017年): 約900億ドル
アジア地域における台風の経済被害では、以下のものが挙げられます。
- 台風ドクスリ(Doksuri、2023年): 280億ドル以上(主に中国)
- 台風ハギビス(Hagibis、2019年): 170億ドル以上
- 台風ミレーユ(Mireille、1991年): 184億ドル(2018年ドル換算)
- 台風ハイエン(Haiyan、2013年): 29.9億ドル以上(フィリピン史上最大)
経済被害のランキングは、各国の経済規模や保険加入率などによっても影響されるため、単純な比較は難しい点が多いと思いました。
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