スペックは上位機とほぼ同等
本機は、2003年秋に発売された「*ist D」の下位モデルになる。「*ist D」はボディのみで10万円台前半という低価格だったにもかかわらず、専用開発のペンタプリズムと0.95倍と良好なファインダ倍率や充分な連続撮影枚数など、コストパフォーマンスの良さに正直驚かされたのだが、本機はその基本性能をそのままにボディのみなら10万円未満、レンズ付きでも10万円台前半の価格となった。価格を下げることでコストカットがうかがえる部分を探してみると、別売の「バッテリーグリップ」が非対応になったこと、記録メディアがコンパクトフラッシュからSDメモリーカードに変更されたこと、画面下と右側にあったファインダ内の情報表示液晶が、画面下の1箇所に集約されたこと、グリップ上部にあったTvダイヤルとXシンクロソケット/マニュアルホワイトバランス設定用の独立したボタンが廃止されたことなどが挙げられるが、目立って気になる部分はない。
バッテリーグリップが使えなくても電池寿命は十分。同梱のCR-V3リチウム電池を使用して、3日間街をスナップして歩いたが電池の残量表示はフルのままだった。単3電池×4本も使用できるので予備にアルカリ電池かニッケル水素充電池をカメラバッグに忍ばせておけばことは足りるはずである。ファインダー内表示に関しては画面の右や下を情報を探して視線を動かす場所が減ったのは逆に使いやすいとさえ感じる。
Tvダイヤルが減ってセレクトダイヤルひとつに集約されたことでマニュアル露出撮影時の設定が少し面倒になるかもしれないが、スナップ撮影をしている限りではマニュアル露出の必要性さえ感じられない。何がしかのオート露出で撮影しプレビューしながら露出補正すれば充分だと思う。Xシンクロソケットに関しては、このクラスのデジカメを欲しがるユーザー層がスタジオの大型ストロボを使用するとも思えないし、どうしても使用したいのであれば、ホットシューにつけるタイプのシンクロアダプタを使用すればいい。マニュアルホワイトバランスもその機能自体が失われたわけではなく、独立したボタンがなくなっただけだ。その一方で、背面の液晶モニタは1.8型から2.0型へと大型化している。使いやすさを増す方向では逆にコストをかけているのが確認できる。
CFからSDメモリーカードへ変更
記録メディアはSDカードに変更された。512MBのメディアでは“6メガS.ファイン”で約167枚の撮影が可能。記録メディアはSDカードに変更された。512MBのメディアでは“6メガS.ファイン”で約167枚の撮影が可能。
スッキリとしたボディ上面
上位機種に比べてボタン類は少なくスッキリした外観だ。省略されたボタンの機能はメニューの階層にある。
各種のアダプター
純正アダプタでは中判の“67→K”“645→K”のほかに“タクマーねじマウント→K”の3種類がある。
過去のレンズ資産が生かせるのは魅力
今回テストサンプルを撮影するに当たって使用したレンズは「smcPENTAX-DAズーム18~55mmF3.5~5.6AL」(以下18~55ズーム)。35mmフィルム換算で27.5~84mmの広角から標準域までのほどよい焦点距離をもったズームレンズである。DAレンズは絞りリングのないデジタルカメラ専用のレンズである。これは、本機とともに普及させることを狙ったもので、開放レンズ値こそそれほど明るくはないが小型軽量でボディに装着したときのバランスがいい。
レンズマウント自体は昔ながらのKマウントで、純正の各種マウントアダプタを使用すれば中判カメラのPENTAX 645や67のレンズ、スクリュータイプのSマウントなど、昔のレンズも使用できる。その際にはカスタムファンクションの設定で「絞りリングの使用」を許可にしておく必要がある。過去の資産が生かせるのは大きな魅力であると同時に楽しみでもある。
気になったのは、カメラのミラーショックとその音質である。ミラー自体はAPS-Cサイズに合わせた、35mmカメラよりもかなり小型のもので、それほど慣性モーメントが大きく発生するようには見えないのだが、シャッターを切ったときのショックは結構気になった。そしてたくさんの人が周囲にいるような状況ではその音の大きさから何度か振り向かれることがあり、ことのほか音が周囲に響いているように感じる場面があった。
画面内の輝度差の激しい場面で、輝度の高い方へピントが合ってしまう状況も幾度か経験したが、頻繁に起こるわけではない。このときはMFに切り替えて撮影したのだが、ファインダ・スクリーンのマット面は意外にピントの確認がしやすくMFレンズでの使用も苦にならないのではと思わせた。実際試しに67のレンズをアダプタを介して使用してみたのだが特に問題は感じなかった。
一方、シャッターのタイムラグも若干あるようでシャッターボタンを押してから、実際にシャッターが動作するまでに一呼吸の間が存在し、感覚的に馴れが少し必要だった。これらは評価機が製品直前の量産試作機だったことも関係しているだろう。
連写速度は2.8コマ/秒でコンシューマ機としては充分な速度で、一度のレリーズで露出を変えて撮影できるブラケット撮影時でも素早く3枚の連写ができる。連続撮影枚数はJPEGで8コマ、RAWで5コマとなっているが書き込みスピードが思ったより速いので、JPEG撮影時であれば制限を感じないくらいのテンポで撮影することができる。
本機は、*ist Dの下位機種として発売されたものの基本性能で劣ると思われる部分はほとんどない。解像度の同じCCDを搭載している同じメーカーのカメラでわざわざ目立った優位性を感じない上位機種にユーザーは手を出すだろうか。あえて言うなら記録メディアがSDメモリーカードなので、最大でも1GBのメディアしか使用できないということぐらいだろう。自社の上位機種さえも喰ってしまいそうな*ist Dsは他メーカーのデジタル一眼レフを持ったユーザーにとってもかなり気になる存在だと思う。
ペンタックスの中判カメラユーザーの1人としては、変換アダプタを揃えておいて6×7カメラと一緒に持ち出してみたり、中古屋で昔のレンズを見つけてきて、わざと解像度の悪いレンズで撮影してみたいと思っている。いまどきのカリカリ、チリチリに解像力やコントラストの高いレンズもいいが昔の軟らかい描写をするレンズで遊んでみたいのだ。
ファンクションボタンで基本的なWB、ISO、測光モード、フラッシュ発光モードの設定変更画面ができる。
PENTAX *ist Dsの主なスペック | |
製品名 | PENTAX *ist Ds |
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有効画素数 | 610万画素 |
液晶 | 2.0型TFT(21万画素) |
ファインダ | ペンタプリズム式(視野率95%、0.95倍) |
シャッター速度 | 1/4000~30秒 |
電源 | 単3形電池×4 |
記録メディア | SDメモリーカード |
サイズ(W×D×H) | 125×66×92.5mm |
重量 | 505g(本体のみ) |
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