PENTAX*ist DL

それでもPENTAX

7月7日に発売が開始された*ist DLは、ペンタックスのデジタルカメラの企画、開発の基本理念である「ユーザーフレンドリーであること」をより一層追求した、エントリーモデルのデジタル一眼レフです。

使いやすさ、わかりやすさを向上させた操作性、このクラス最大の2.5型大型液晶モニター、高精細画像の撮影が可能な有効610万画素CCDなどを備えるとともに、小型で携帯性に優れた世界最軽量ボディを実現しました。

価格的にも最安レベルで他社のライバル機と勝負するためのモデルであるわけで名前のDLの「L」は、“Light Weight”、“Large LCD”に由来していると言うことです。

カメラボディの特徴 

125×67×92.5mm(幅×奥行き×高さ)でボディのみ重量約470g。実測でボディ(アイカップ付き)、単三型ニッケル水素電池4本、18-55mmズームレンズとフード込みで約830g。世界最小ではないが、キヤノンEOS Kiss Digital Nに次ぐ小ささで、重さではKiss Digital Nの485gより軽く、世界最軽量である。

外観はペンタ部分を低く見せるデザイン。色はブラックとシルバーの2色が用意されている。

ペンタックスはMFカメラの時代にはオリンパスと小型一眼レフ競争を繰り広げた歴史を持つなど、カメラの小型化には非常に熱心なメーカーである。このコンパクトなボディに、デジタル一眼レフでも最高級機レベルにしかまだ搭載されていない2.5型の大型液晶を採用したことが、大きな特徴と言えます。

*ist Dシリーズのグリップは他メーカーに比べて前後の突出が大きいという特徴です。これは右手でしっかりとホールディングさせるためと考えられる。気になったのは、ボディを持ち上げる際にこのグリップの内側部を強く握るとギシギシという感じの異音がすることがあります。

各種の単三電池を使用可能

本機は普及型デジタル一眼レフとして、各種の単三電池型バッテリーを使用できることが大きな特徴でありバッテリーについては各社いろいろな主張があるが、世界中でもっとも普及し、低価格で容易に調達可能な単三型アルカリ乾電池を使用できるというのは、この*ist DLの大きな利点である。ただしCIPA基準でストロボ不使用時約90枚、ストロボ100%使用で約50枚と、撮影可能枚数はかなり少ない。また氷点下0度といった低温ではほとんど撮影できなくなるという。

大容量で低温でも安定したバッテリーを使用したい場合は、CR-V3型のリチウム電池を使用できる。また反復使用でコストを下げたいなら、充電式の単三型ニッケル水素充電池を選択すればいいです。その場合には2,500mAhクラスの大容量タイプを使用すれば、電池の持ちの点でもかなり安心である。CR-V3型電池でストロボ不使用時に約850枚(気温23度)、約560枚(0度)、ストロボ100%使用時で約650枚(23度)、約410枚(0度)、2,500mAhニッケル水素充電池満充電時約560枚(23度)、0℃約500枚(0度)、ストロボ100%使用時で約440枚(23度)、0℃約380枚(0度)というデータが公表されています。

なおオキシライド電池およびCR-V3型の充電池は、電圧特性に問題があり、誤動作のおそれがあるため、使用は勧めないということなので、十分注意して欲しい点です。

SDメモリーカードを採用

*ist DSはデジタル一眼レフで初めてSDメモリーカードを採用したモデルです。当時はまだ大容量のSDメモリーカードが登場していなかったので、特にRAWデータ撮影時の記録枚数の少なさなどが問題として指摘されていたが、現在大量量のSDメモリーカードが続々各社から登場しつつあり、ライバル機のひとつであるニコンD50もSDメモリーカードを採用するなど、エントリー向けデジタル一眼レフではSDメモリーカードが標準です。

実際上位機が一般的に採用するCFに比べてSDメモリーカードはコストで比較してデータ転送が速いという特性があり、またサイズの小型化で携帯には有利であるし、カメラボディの小型化にも貢献しているだろう。取り扱いも容易で、書き込み禁止設定が物理的に可能であるのも、重要な撮影後のデータの保管の際に安心であす。

また、多くのカメラメーカーのコンパクトデジカメの記録メディアがSDメモリーカードであるというのも、両者を併用する場合には便利であることは自明だ。今後さらに大容量化と低価格化が進むだろうから、SDメモリーカードの採用はこのカメラの主たるユーザー層がコンパクトデジカメからのアップグレード層と考えるならば、適切な選択であると言えます。

撮像素子、設定可能画素数、圧縮率設定

撮像素子はAPS-Cサイズ(23.5×15.7mm)、有効画素数610万画素の原色フィルター採用のCCDである。したがって使用するレンズの焦点距離を1.5倍すれば、35mm判換算のレンズ焦点距離です。

 記録データフォーマットはRAWとJPEG(Exif 2.21)で、JPEGで設定可能な画素数は6M(3,008×2,000ピクセル、以下同)、4M(2,400×1,600)、1.5M(1,536×1,024)の3種類。

JPEG時の圧縮率も3段階で、圧縮比はそれぞれS.ファインは約1/3、ファインは約1/6、エコノミーは約1/12である。なおRAWは3,008×2,008画素で記録され、JPEGの最大画素3,008×2,000画素とは異なり、わずかな違いではあるが同一ではないです。

ファインダー 

デジタル一眼レフとしてペンタックス初のペンタミラー式ファインダーであるが、ペンタプリズムを採用している*ist DSに比べて画面が小さく見えるのはやむを得ないところです。

それでも他社機よりはファインダー倍率はわずかに大きい0.85倍である。視野率は95%。視度補正機能も備わっている。-2.5~+1.5ディオプターと調整幅はあまり広くないので、これで調整できないならば視度補正レンズか眼鏡などを併用する必要があります。

ナチュラルブライトマットIIスクリーンは、通常の使用ではとても明るく鮮明に見える。上級機の*ist DSより明るいとメーカーも言っています。ただし逆光気味の時には、ファインダースクリーンが白っぽく、見えにくくなることがあった。また白っぽい背景ではスクリーン上に同心円状のパターンがいくつか重なったような模様が見えることがあります。

ファインダー下部には各種の情報が表示されるが、文字などの大きさが*ist DSに比べてかなり小さめです。

液晶モニター

液晶モニターは2.5型約21万画素の低温ポリシリコンTFTカラーLCDで、室内などでは撮影画像は細部までとても鮮明に見え、発色もきれいである。もちろんメニューなどの表示も明瞭です。ただし日光が直接あたるような状況では、やはり見にくくなる。なお明るさの調整は、詳細メニューの中で行なえます。

ともかく液晶モニターに関しては、やはり大きいことはいいことだ、と単純にそう思います。大きくても画素数が少ないと細部の見え方に不満を感じるが、このカメラはいい。*ist DSなどの上位機より優れた部分です。今後登場が予定されている他社機で2.5型液晶を採用していても11万画素程度の粗いものもあるので、大きな長所です。

 ピント合わせ 

AFの動作はシングルとコンティニュアスの設定が可能で、ワイドフォーカスエリア(3点)とスポットエリアの2種の選択が可能。これらは撮影メニューの中で設定する。ワイドの場合でも測距点は選べず、カメラが自動的に最適な測距点を設定するという。

 AFの速度は明るいところでは瞬時に合う。室内など暗いところではジ、ジ、ジと数回にわけてAF動作が生じ、迅速とは言い難い。だが、AFにまかせた撮影では、合焦精度に問題を感じることはなかった。

 なお、通常はシャッターボタンの半押しでAF動作がスタートするが、背面のOKボタンを押すとAF動作するように設定できる。これはカスタムメニューで設定する。またこの機能はクイックシフトフォーカス対応レンズでなければ使用できない。

 AFとMFの選択は、マウント脇の切り替えスイッチで行なう。MFの合焦はスクリーン像を見ながら行なうわけだが、ピントが合ったように見える幅がわずかにあり、ファインダー倍率が小さいこともあり、正確なピントの位置がややわかりにくい。

例えば付属レンズの18mmの広角側でフォーカスエイドを機能させると、目でピントがあったように見える位置から、さらに少しピントリングを回さないと合焦表示が出ない。その後さらにピントが行き過ぎる位置までフォーカスリングを回しても、スクリーン上ではピントがあったように見え続ける。ということで、MFで正確なピントを出すためには、フォーカスエイド機能を頼りにすることをお勧めです。

露出モード(P/Tv/Av/M)、シャッター速度 

基本的な露出モードは、プログラム(P)、シャッター速度優先(Tv)、絞り優先(Av)、マニュアル(M)の4種類である。このほかにカメラまかせのシーンモードが用意されている。露出モードの切り替えは、ボディ左肩のモードダイヤルを回転させて設定する。操作は簡単確実である。

 オート時のシャッター速度は1/4,000秒から30秒まで無段階で、マニュアル時には1/3EVあるいは1/2EVステップでの変更が可能である。なお長時間露出のバルブ(B)は、モードダイヤル上にMとは別に用意されているが、この方式のほうがMの中でバルブを設定するよりもわかりやすく操作も速い。

電源をONにすると設定されているモードとISO感度、連写モード、ストロボモードなどが液晶モニターに表示される。これがわずらわしい場合は、詳細設定メニューでガイド表示をOFFにすればいい。

設定された撮影項目を一目で確認したい場合には、INFOボタンを押すと15秒間設定内容が表示されるのは便利な機能です。

なお、ペンタックス67や645マウントレンズ、M42プラクチカマウントのレンズなどをアダプターで使用する場合には、マニュアルモードで絞り込み測光を行ない露出を決めて撮影したい。絞り込んだ状態で絞り優先AEで撮影するいわゆる実絞りAEでうまく撮れそうだが、実際に撮影したところ露出が大幅にアンダーになってしまう。これは取扱説明書にも注意が記載されています。

シーンモード 

シーンモードはペンタックス独自のオートピクチャープログラム、標準、人物、風景、マクロ、動体、夜景人物、ストロボオフから選べる。

 オートピクチャープログラムは、標準、人物、風景、マクロ、動体モードから、カメラが最適な撮影モードを自動的に選択するというものだが、アルゴリズムの詳細はわからない。

 この標準撮影モードとP、Tv、Av、M、Bモードの違いは、まず画質の設定が「鮮やか」に固定され、鮮やかでコントラストが高くシャープな画面になる。これは設定を変更できない。また彩度、シャープネス、コントラストなどの項目も変更不可である。そしてストロボが自動ポップアップする自動発光モードに設定できる。

 マニュアルにも書いてあるが、撮影後にPCで画像処理を行ないたい場合には、シーンモード以外に設定し、画質をナチュラルモードにしたほうが結果がよいはずなので、レタッチ前提の撮影ではシーンモードの使用は避けた方がよい。シーンモードはカメラからダイレクトにプリンタに印刷したり、PCを使用してもそのまま印刷するなど、撮影画像をあまりいじらない場合のものと心得ておく必要がある。

測光、ISO感度設定、ホワイトバランス、色空間 

測光は16分割測光、中央重点測光、スポット測光の3種類を備え、不足はない。

 露出補正は1/2EVまたは1/3EVごとに設定可能。適正露出が得られない場合、表示パネルとファインダー内部のシャッター速度や絞りの露出表示が、露出モードに対応して点滅して警告する。

オートブラケット撮影も可能で、露出補正なしと+側補正、-側補正の3コマを連続撮影する。もちろん補正のステップ幅や、撮影順の設定が撮影メニューの中で可能です。

 ISO感度は200~3200まで5段階の設定が可能で、さらに感度自動調整(AUTO)も可能である。AUTOの場合に、ISO200からどの範囲まで自動調整するか4段階の設定がカスタム設定で可能である。また、あらかじめ設定したISO感度を超えた設定に変更した場合、ファインダーに警告表示を出すことも可能だ。これは感度を高く設定した際、元に戻すことを忘れてしまうのを防ぐためである。このようにISO感度の設定については気配りが行き届いている。

 ホワイトバランスも細かく設定でき、太陽光(約5,200K)、日陰(約8,000K)、曇天(約6,000K)、白色蛍光灯(約4,200K)、昼白色蛍光灯(約5,000K)、昼光色蛍光灯(約6,500K)、白熱灯(約2,850K)、ストロボ(約5,400K)、マニュアル設定が可能である。

 またオートホワイトバランス(AWB)の調整範囲は約4,000~8,000Kであり、白熱灯以外の光源にはほぼ対応できる。反対に言えば白熱灯が主たる光源の場合にはAWBでは対応できず、画面が赤っぽくなるので、白熱灯を指定するかあるいはマニュアルで調整する必要がある。なおホワイトバランスのマニュアル設定は、P、Tv、Av、Mの各モードでしか設定できない。色空間はsRGBかAdobe RGBのいずれかを指定できる。

画質設定(コントラスト、彩度など)

 撮影時の画質については、最初に撮影メニューの画像仕上げで「鮮やか」と「ナチュラル」の設定を行なう。鮮やかの場合は、いわゆるメリハリのきいた画質に調整される。ナチュラルはレタッチを行なう場合の推奨モードで、自然な感じの画質になると説明されている。

 さらに画質の細かな設定としては、彩度とシャープネスとコントラストの3つのパラメーターの調整が可能で、いずれも撮影メニューの中で設定する。それぞれ±2段ずつ5段階の調整ができる。

 これらの画質調整はシーンモード以外の露出モードで可能で、シーンモードでは自動的に「鮮やか」の設定に固定され、彩度、シャープネス、コントラストは調整できない。

連写性能

 連続撮影モードは、カメラ背面のFn(ファンクション)ボタンから設定できる。メーカー公称値は最高で約2.8コマ/秒である。連続撮影可能枚数は、カスタムメニューの「撮影可能枚数表示の設定」を「連続撮影可能枚数」にすると、シャッターボタン半押し時に確認できる。実機で確認したところ、バッファが空の状態では3コマと表示される。画質や画像記録サイズを変えても一切変わらなかった。

 実際に撮影してみると、MFでシャッター速度が十分高速な場合、6Mスーパーファインモードでは5コマまで連続的に撮影でき、6コマ目からは間隔が長くなるが、中断することなくほぼ一定の間隔で撮影が続く。数回テストして最初の5コマの連続撮影に要した時間はおよそ2秒間ほどであったので、約0.4秒/コマあるいは約2.5コマ/秒ということになる。この値については測定誤差が大きいと思うのであくまで参考ということにしてほしい。その後はおよそ8秒間で10コマ撮れている。

 撮影開始から一瞬遅れて、SDメモリーカードに記録していることを示すオレンジのLEDが点灯したままとなる。512MBのメモリーカードいっぱいまで連続撮影してみたが、要した時間は4分15秒ほど、316コマ撮影できた。したがって最初の5コマ以後は、約0.8秒/コマの速度でメモリカードがいっぱいになるまで連続的に撮影できることがわかる。

 RAWデータの場合、最初に3コマ分を高速連続撮影した後は、10コマ撮影するのに約32秒かかっており、およそ3秒に1コマの速度で撮影を続けることができる。メモリカードの書き込み速度が関係するかどうか調べるため、手元の2MB/secと7MB/secのSDカードで比べてみたが、差はほとんど認められなかった。

ストロボ

 内蔵ストロボはガイドナンバー15.6(ISO200時)、18mmレンズをカバーするということは35mm判換算で28mm相当をカバーするということだ。同調速度は1/180秒以下。内蔵ストロボの制御範囲はおおよそ0.7~4.5mとのことで、0.7mより近接した撮影時には露出制御が正しく行なわれないとある。しかし実際にはマクロモードで35cm程度に寄った撮影でも、問題なく撮影できた。ただしレンズによるケラレの発生には注意が必要である。

 ストロボの光量補正は-2.0~+1.0の範囲で可能で、1/2EVあるいは1/3EV単位で変更できる。

 ストロボの特殊機能としては赤目軽減発光があるだけで、他社製カメラにあるような後幕シンクロ機能はない。スローシンクロはシャッター優先あるいはマニュアルモードでシャッター速度を低速に設定することで可能である。

 オートピクチャーおよびシーンモードに設定されていると、ストロボは自動ポップアップする。このときにストロボのUPボタンを押すと、自動発光と強制発光を切り替えられることは覚えておくと便利である。

 なおスクリューマウントレンズなど絞りをA位置にできないレンズを使用した場合、内蔵ストロボは常にフル発光になってしまうので、そうしたレンズを使う場合は注意したい。

再生機能

 撮影直後に表示されるクイックビュー画面では、ヒストグラム表示の有無をカスタム設定で設定できるし、表示時間も詳細設定メニューで変更できる。

 このクイックビュー撮影画面からすぐに別の画像を表示できない。再生ボタンを押して再生モードにしてからでないと、他の画像を見られない。撮影後、ひとつ前に撮影した画像と比較して見たいことは頻繁に起きるから、これができないのは不便だ。

 もうひとつ、このカメラは縦位置情報を画像が持たない。このため再生時に自動的に縦位置表示に切り替わることはないし、PCに取り込んでからいちいち画像回転の処理を行なわなければならないのは面倒である。これらは撮影後の処理を軽減するために、今後対応して欲しい機能だ。

 再生時の画像表示方法は4種類設定でき、画像のみ、画像にヒストグラムを重ねた再生、画像+詳細撮影情報、ラストメモリー(前回再生時に表示したモードで再生)が選択できる。画像表示のみにしていても、INFOボタンを押すとヒストグラム表示や撮影情報表示が可能になる。またヒストグラム表示は位置を上下に移すことができる。カスタム設定で白飛び警告表示を設定すると、画像の白飛び部分を明滅して教えてくれる。

 1コマ表示時電子ダイヤルを左方向に回転させると、9コマインデックス再生になる。反対に右方向に拡大すると、画像の拡大表示になる、最初に表示される倍率はカスタム設定で変更可能だ。拡大表示は1.6倍から12倍まで変更できる。またスライドショーで連続的に画像データを表示することもできる。

 再生時の画像処理機能として、撮影した画像のフィルター加工が可能である。白黒、セピア、ソフト、スリム4種類で、このうちスリムというのは画像の縦横比を縦横それぞれ2倍まで調整する機能である。加工した画像は、元の画像とは異なるファイル名でSDメモリーカードに保存されるので、レタッチソフトで改めて調整することもできる。

操作性

 電源のオン/オフは、シャッターボタン周りの電源レバーの回転操作で行なう。ペンタックスのデジタル一眼レフでは、この電源レバーをON側にいっぱいに回すとプレビュー(絞り込み)が可能である。これらの操作は非常にやりやすい。絞り環にAポジションのない昔のKマウントレンズを装着した場合、このプレビューレバーを操作すると絞り込み測光が行なわれる。またM42スクリューマウントレンズなどを使用するようにカメラを設定した場合、あらかじめレンズを絞り込んでおいて、このプレビュレバーを操作すると測光ができる。

 各部の操作ボタンは基本的に円形で、比較的大きめで押しやすい。スイッチ類のクリック感や押した時の感触なども、問題を感じることはなかった。頻繁に使用する十字キーはカメラを握ると自然に親指がくるところにあり、操作性はよい。同じく頻繁に使用する電子ダイヤルは、ファインダーの右脇でこの位置も自然に操作できるものだ。

 ボタン配置に関してはその他、頻繁に使用する再生ボタンが一番左下で、ホールディングしながらだとやや押しにくいと感じたのが、気になった程度である。

 露出モード切り替えは左肩にあるモードダイヤルで行なうが、これも簡単確実である。

 露出モードやシャッター速度など撮影に必要な情報は、右肩部のモノクロ液晶パネルに表示される。これも文字が明瞭で見やすかった。

 2.5型大型液晶を採用したことで、メニューの表示文字はいずれも大きく見やすい。また各種設定画面での背景色と文字色の組み合わせは判別しやすい配色を採用したということで、使用中に見づらいと感じたことはなかった。

 撮影メニュー、再生メニュー、詳細設定メニュー、カスタムメニューは、メニューボタンを押すことで設定画面に入る。メニュー画面に入ったら、上下の十字キーで項目を選択し、横方向の十字キーで設定操作に移行するという操作は直感的なもので、問題はない。ただし、この十字キーに対する反応が遅いのが気になった。

 また撮影メニューでは、測光、AFエリア、AFモードという比較的使用頻度が高い項目が2面目に配置され、撮影中に即座に設定できないが、このカメラのユーザー層を考えるとこうした項目をいじることは少ないという考えなのだろう。メニューを面単位でめくれるようにすると、操作が速くなるのだが。例えば現在はコマンドキーとセレクターキーの両方に、同じメニューの項目の切り替え機能が設定されているが、片方をメニューの面単位の切り替えにするなどの方法が可能ではないかと思った。

 シャッターボタンは軽く押すと半押しとなってカメラが動作を開始し、さらに深く押すとシャッターが切れる。2段目のシャッターを押すには少し力がいるため、半押しの位置はつかみやすい。これらの感触はまずまずである。

 シャッターを切ったあとのタイムラグについては公表されていないが、遅くは感じない。

 シャッター音はあまりよくない。“キシュンキシュン”という甲高い音が耳につく。また低速シャッターを切ると、ミラーが戻るときにカコンという硬い音がまじって、同時に手にミラーショックが伝わってくる。特に連続撮影をしていると、連続的に伝わるミラーショックが気になる。こうした動作音や動作感は、このカメラがやはり普及機クラスのものであることを示している。

 なおミラーの振動を嫌う撮影の場合、三脚に固定して2秒セルフタイマーを使用すると、シャッターボタンを押すと同時にミラーアップし、2秒後にシャッターが切れることでミラーショックによるブレを軽減することができる。

付属レンズの仕様および操作感など 

レンズセットとして発売されているペンタックスDA 18-55mm F3.5-5.6 ALレンズは、9群12枚構成、35mm判換算で27~82.5mm相当、最短撮影距離は0.25m、直径38mm、長さ67.5mm、フィルター径は52mm、重量は225g、フード付きで250g。

 DAレンズはイメージサークルが小さい*ist Dシリーズ専用レンズで、絞り環がなく、従来のペンタックスレンズのAポジションに固定した場合と同じ制御になる。マウントはペンタックスKAFマウントである。レンズの外装はプラスチックである。

 幅広のゴムが巻かれたズームリングの操作は、トルクが軽めだがなめらかで操作感は良好だ。35mm近辺でレンズの全長がもっとも短くなる。

 先端のフォーカスリングにもゴム環が巻いてあり、軽めの操作感だがスムーズだ。このレンズはAF動作中ピントリングが回転するが、これには触ってはいけない。しかしAF動作後は、フォーカスモードを切り替えることなくそのままピントリングを回してMF操作してよい。

 これをペンタックスはクイックシフト・フォーカス・システムと呼んでいる。他社では高級タイプのレンズなどにリングタイプの超音波モーターを使用して常時AF/MF切り替え可能としているが、このペンタックスのシステムはボディモーター駆動であるにもかかわらず、AFからMFに特別な操作をせずに移行すことができるのはとてもよい。ただしシャッターボタンは半押ししたままで操作しないと、MFでピントを合わせても、シャッターボタンを押すと再びAFが機能してピント位置を変えてしまう。これには慣れなければならない。

 それからこのレンズは焦点域全域で0.25mまで近接できるが、0.35~0.25mの範囲では画面周辺部で画質が低下する場合があるため、できるだけ絞って撮影した方がよい。絞り羽根は6枚で、どの絞りでもほぼ6角形である。

 花形の専用レンズフードPH-RBA(52mm)は、バヨネット方式で簡単にレンズ先端に着脱でき、反対にかぶせて収納することもでき、使い勝手はよい。着脱式のPLフィルター窓もあり、PLフィルターを使用した際、フードを付けたままでフィルター枠を回転させることができる。

 なお*ist DLの内蔵ストロボを使用する場合、フードを取り外さないとストロボ光がケラレてしまうと説明書にあるが、実際に撮影してみると35mm以上の焦点距離で1m以上離れたところならばケラレることはなかった。もちろん実際の撮影では、万が一の失敗をさけるために取り外す癖をつけた方がよいだろう。

ハードウェア評価のまとめ 

我が国最初の35mm判金属製一眼レフを世に送った、長い歴史を誇る老舗ペンタックスの最新機であるが、ともかく低価格機を世に送るために最大限の努力をしたという感じを受ける。作りの安っぽさ、高級とは言い難い動作音、やや緩慢な動作などは、価格相応ということだろう。

 しかし小型かつ世界最軽量のボディにこのクラス最大の2.5型大型液晶モニターを採用していることや、基本的な性能が上級機の*ist DSなみであるところなど、単に製造コストを切りつめただけのカメラではないところに、このカメラの魅力と存在意義がある。また単三電池が使用可能なバッテリーシステムは、他社機に対しても大きなアドバンテージがある。

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