日本には数多くの迷信があり、その多くは科学的根拠がないにもかかわらず、長い歴史の中で現在の日本文化の一部となり日常生活に溶け込んでいます。それは、迷信や言い伝えが適当な作り話ではなく、いつもと違った現象から先を読むことを生活の中で作り上げていった先人の知恵であり、現代にも通じることが多いからだと思います。
そんな昔から言い伝えられている日本の迷信を調べてみました。迷信を信じない人も、言い伝えが生まれた由来を知ることは、日本文化や歴史を垣間見ることができ、いかに迷信が人々の暮らしに寄り添っていたかを感じるきっかけになるでしょう。そして、意外にも迷信はあなたの中に浸透し心に抱いていることを感じるかもしれませんよ。
縁起が良い迷信・言い伝え編
続いて縁起が良い迷信・言い伝えをご紹介します。現代においても縁起を担ぎ、迷信通りに縁起物をお守りとして携帯する光景はよく見られます。四つ葉のクローバーや蛇の抜け殻などが良い例でしょう。また生活の中でも新しいことを始める、行う時に縁起を気にすることは決して珍しいことではありません。
また、縁起が良いものを見ただけで幸運の兆しを感じ明るい気持ちになるのではないでしょうか。縁起の良い迷信が日本文化にしっかりと根付いているということでしょう。
耳たぶが大きいと金持ちになる
耳たぶが大きいと金持ちになるという迷信は、七福神の大黒天様に由来すると言われています。大黒天は、肩に大きな袋を背負い、右手には打ち出の小槌を持った財宝、福徳開運の神様として知られています。大黒天は耳が長く垂れさがっているのが特徴的なことから、大黒天にあやかって「大きな耳たぶは福耳」と言われるようになりました。
また、釈迦の姿の特徴を数え上げた「三十二相八十種好」にも記されてあり、お釈迦様にあやかりたいという願いもあると言われています。
蛇の抜け殻を入れて金運アップ
「蛇の抜け殻をいれて金運アップ」という迷信は、七福神の弁財天様に由来すると言われています。弁財天は、財宝、豊穣を司る神様で、蛇は弁財天の使いであると言い伝えられてきました。そのため、弁財天の使いである蛇も同じ力が宿ると信じられ、その効果にあやかって蛇の抜け殻は縁起の良いものとされてきました。
また蛇は脱皮を繰り返し成長する爬虫類です。昔の人は、脱皮を繰り返し成長する蛇に強い生命力を感じ縁起が良いものに結びついたとされています。
流れ星が流れている間に願い事を3回心の中で繰り返せば願い事が叶う
流れ星に願い事をすれば叶うという迷信は、天文学がない時代に日本をはじめ海外でも広く言い伝えられてきましたが、その起源や由来はキリスト教の教えによるところが有力な説と言われています。空にいる神が、時々下界の様子を眺めるため天界を開け、その際に漏れた天の光が流れ星であり、その時に願いを口にすれば、その願いは神の耳に届くと言われています。3回という回数の由来は諸説がなく、伝承の中で3回唱えることが広まっていったとされています。
四つ葉のクローバーを見つけると縁起が良い
四つ葉のクローバーは、小葉が4枚になったシロツメクサのことで、見つけることが非常に難しいことで有名で、確率にすると1万分の1から10万分の1とも言われています。このように希少価値が高く、四つ葉のクローバーの花言葉は「幸福」ということもあり、縁起が良い迷信として日本各地広く言い伝えらえてきました。
また、クローバーの4枚の葉脈が十字架に見立てられ、海外でも幸運を現わす神聖なものとして強い力があると信じられています。
初夢に一富士二鷹三茄子を見るととても縁起が良い
古くから伝わる迷信で、初夢でこれらを見ると縁起がよく幸運に恵まれると考えられています。富士山は信仰の対象として古くから崇められており、「冨士講」と呼ばれる宗教団体が存在しました。その拠点の一つが江戸の駒込富士神社で、その周辺にあった鷹匠屋敷、そして駒込地域の名産である茄子を合わせて縁起物とされるようになりました。
また富士は「無事」や「不死」、鷹は「高」、茄子は「成す」という語呂あわせから縁起物になったという説があります。
お湯呑みの中に茶柱が立つと、吉事の前触れ
昔からお茶を飲むときに、湯呑みの中に茶柱が立つと吉事の前兆と言い伝えられてきました。この迷信の由来の一つは、単純に茶柱が立つのは珍しいからと言われています。茎の部分が急須の網の目を通して湯呑に入ることもさながら、さらに真っ直ぐ立った状態というのはなかなか見る機会はないでしょう。また、なんであれ「柱が立つ」ということは縁起が良いことだと言われていました。
また、茎が多く入る2番茶も新茶同様に売れるようにしたいと考えたお茶屋さんが、茶柱は縁起がよく吉報の知らせであると言い広めたという説があります。
初物を食べると七十五日長生きする
「初物を食べると七十五日長生きする」という言い伝えの由来は、江戸時代の死刑囚の言動が有力であると言われています。この時代、死刑囚は最後に食べたいものを選ぶことが許されていました。そこで一日でも生延びたい死刑囚は季節外れの食べ物を選び七十五日間長生きしたという話から、庶民の間でこの迷信が広く言い伝えられるようになりました。
また、昔から日本人は初物にこだわり、初物を食べれば他の食べ物にはない生命力を得ることができ健康で長生きできると信じられていました。
(春に)黄色い蝶を見かけたら幸運になる
日本では古来より蝶は幸運を運んでくれる縁起のよい生き物として迷信化されていきました。それは、優れていることを意味する「長」、また整っていること意味する「丁」と発音が同じことが理由の一つとされています。また、さなぎから羽化する蝶の成長過程は「変化」や「飛躍」を意味し、昔の人々には不思議な能力を持った生き物に映ったと言われています。
また黄色は、風水では健康運や金運を意味し、黄色い蝶は仕事運が上昇する前触れと言い伝えられています。
朝蜘蛛は縁起が良い(朝蜘蛛を殺してはいけない)
日本人は古来から蜘蛛によって縁起をかつぐ風習があり、朝蜘蛛はとても縁起の良い生き物として迷信が広く伝わっています。その理由の1つが、朝蜘蛛はあの世とこの世をつなぐ天の使いだとされています。そして、朝蜘蛛は幸福を運んでくる象徴と言われ、商売人にとってはお客さんを運んできてくれる生き物として大切にされてきました。
また、蜘蛛が網を張るのは晴天の時だけと言われ、網を張っている朝蜘蛛は晴天のイメージから良いことを運んできてくれる生き物と言われています。
夜の蜘蛛は親でも殺せ
夜蜘蛛は縁起が悪い生き物という言い伝えから「夜の蜘蛛は親でも殺せ」という迷信が生まれました。夜の薄暗いところで網を張る夜蜘蛛は、暗闇で獲物を狙う盗人を連想させることから、夜に蜘蛛を見ると盗人が家に入る前兆であると言い伝えられてきました。そこで夜蜘蛛を見てしまったら蜘蛛を殺し、盗人が来る前兆をなかったことにしようとしたと言われています。
また、朝蜘蛛は天の使いであるのに対し、夜蜘蛛は地獄の使いだという説があります。そのため夜蜘蛛は不吉な生き物の象徴として忌み嫌われる存在になりました。
白蛇は縁起がいい
昔から白蛇は神の使いと言われ、日本全国でも白蛇を祀っている神社が多くあります。そもそも蛇は昔から農作物を荒らすネズミなどを駆除してくれる存在で、蛇がいる家はお金に困らず金運、財運をアップさせると信じられていました。さらに白蛇はとても珍しく貴重な生き物として扱われていたため、他の蛇よりもさらに縁起が良いと言い伝えられています。金運アップにあやかり勝負事でもご利益があると言われるようになり、最高の縁起物として迷信化されていきました。
軒下にツバメが巣を作ると商売が繁盛する
古くから農家、また商家ではツバメが巣を作ると商売が繁盛し幸福を運んで来るという迷信を信じていました。ツバメは農作物を荒らす害虫を食べ、糞は虫よけ、また肥料にもなります。また、ツバメは人間と共存してきた鳥で、外敵のカラスから身を守るため人間の出入りが多いところに巣を作る習性があると言われています。そのため、ツバメが巣を作るところは人通りも多く商売繁盛になると考えられました。
また、ツバメは環境を察知する鳥で温度湿度とも快適な場所を巣作りに選ぶと言われ、そこからツバメは子孫繁栄につながる縁起が良い鳥として言い伝えられてきました。
ひいらぎは災難を防ぐ
ひいらぎは冬の代表的な植物で、葉の縁に鋭いとげがあることが特徴です。ひいらぎは鬼の目突きという別名を持ち、鋭いとげを嫌う鬼への魔除け効果があることから「ひいらぎは災難を防ぐ」という迷信が伝わっていきました。風水では、鬼門となる場所にひいらぎを飾ることで鬼の侵入を防ぎ邪気を家の中に入れないと言われています。
また、西洋では、ひいらぎはキリストから生まれ魔を退ける力があると信じられ、神聖な植物として大切にされています。
二重の虹を見ると幸せになる
縁起の良い迷信の一つ「二重の虹を見ると幸せになる」は、虹を見ることも稀な中、二重の虹「ダブルレインボー」はさらに貴重で珍しいものなので幸運の前兆だと世界中で言われています。
この二重の虹には「卒業」そして「祝福」の意味が込められています。1つ目の「卒業」とは、これまで努力してきたことが報われる節目の時が近づいていることを意味し、2つ目の「祝福」はこれから進む未来には幸せが待っていることを意味しています。
最後に
日本には、まだまだたくさんの言い伝えや迷信があると思います。全国的に広まっているものや各地方に根強く生き抜いているもの各ご家庭内だけのものなど様々です。そんな言い伝えや迷信をもっと共有出来たら面白いかもしれませんね。私ももう少し調べていきたいと思います。
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