加工食品は種類も多く、いろいろな製造方法で製造されています。 加工食品に使用される添加物は、その機能、用途が多岐にわたるため、統一的な用途名によって分類することが難しいものもあります。 製造用剤という分類は、このような添加物を便宜上まとめたものです。
酒精(しゅせい)
酒精という物質を知っていますか。
言葉の雰囲気では、なんとなくお酒の元になりそうな物質か、その逆に、お酒から作られた調味料のようなものをイメージしやすいかもしれません。
酒精とは、実は、味噌をはじめ。さまざまなものに使われている食品添加物。いったいどんな効果があって、どんな目的で使われているものなのでしょうか。そして、危険性や毒性などはないのでしょうか。調べてみました。
酒精とは
酒精
酒精は「しゅせい」と読み、発酵アルコールのことです。
成分は醸造用のエチルアルコールと同じで、食品添加物に指定されています。
アルコールの種類
アルコールには食用に使用できる発酵アルコールと工業用に使用する合成アルコールがあります。
発酵アルコール
発酵アルコールは、一般飲食物添加物(一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるもの)に分類されています。
発酵アルコールは、糖蜜やサトウキビなどの糖質と、とうもこし、さつまいも、じゃがいもなどのデンプンを原料とし、それらを糖化、発酵後、蒸留して作られています。
合成アルコール
合成アルコールは、石油から得られるエチレンを原料にして作られます。
余談ですが、ジャッキーチェンの酔拳のラストシーンで竹筒に入っているのは工業用アルコール(合成アルコール)です。
酒精とアルコール・エタノール・エチルアルコールの違い
すべて同じです。
アルコールは、エチルアルコールやメチルアルコールなど、アルコール類の総称です。
ただし、単にアルコールというときは、エチルアルコールのことを指している場合がほとんどです。
また、エタノールは国際化学命名法の名称でエチルアルコールが慣用名、日本語名称が酒精なのです。
慣用名とは
化合物の発見・発明者が命名した名称のこと。
酒精の表示義務
酒精には表示義務があります。
そのまま「酒精」と表示される場合もあれば、「アルコール」「エタノール」と記載されることもあります。
酒精の用途と効果
使用する食品によって用途は異なりますが一般的は殺菌のための殺菌料として使用されます。
酒精は要はアルコールのことなので殺菌に使用されます。アルコール殺菌という言葉はよく聞きます。
また酒精には、発酵を止め、二酸化炭素(炭酸ガス)の発生を抑える効果があります。
酒精がよく使われている食品は味噌
味噌は発酵食品ですが、実は酵母が発酵するときは、二酸化炭素が発生するのです。
二酸化炭素が発生するとどうなるのかというと、容器が変形したり、膨張したり。家庭でも、しばらく置いておいたお菓子などの袋がパンパンに膨らむのを見たことがあるのではないでしょうか。あのような現象を引き起こすのです。
それを防いでくれる(発酵を止める)のが酒精なのです。
酒精以外に味噌の二酸化炭素発生を抑える手段
二酸化炭素を抑えるためには、酵母のはたらきを止める必要があります。
そのため、食品を加熱殺菌しても同様の効果が得られます。
また、食品に酒精を入れず、発生した二酸化炭素が抜けるように容器に工夫を施した商品もあります。
ただし、こちらはコストがかかるため、価格も高めになります。
使用されている食品
酒精は味噌のほか、魚介類の加工品や麺類、お菓子などさまざまな食品に使われています。
また、みりんや醤油といった調味料にも、日本酒やワイン(酒精強化ワイン)、焼酎といったお酒にも使われていますし、さらには消毒用のアルコールなどにももちいられています。
酒精強化ワインとは
ワインの一種でスペインのシェリー酒やポルトガルのポートワインなどがありますが、これらは酒精を醸造過程で添加して作られている酒精強化ワインです。
これらのワインは気温が高い地域で作られており、他のワインと比べると腐敗や酸化が早く進み保存性が良くないゆえに酒精(アルコール)を殺菌の目的で添加するのです。
酒精の危険性や毒性
まずはじめに、酒精は食品添加物です。
食品添加物とは、食品安全委員会による安全性テストを経た上で、厚生労働省が使用許可を出しているものですから、定められたラインはきちんとクリアしたものだということ。
それを踏まえた上で、注意しておきたいのは以下のとおりです。
酒精が加えられた食品の健康効果
すでに述べたとおり、酒精を加える目的は酵母のはたらきを止めて二酸化炭素の発生を抑えることです。
しかしながら、味噌もそうですが、身体にいいとされているのは発酵食品だから。すなわち、酵母が生きているからなのです。
つまり、酵母のはたらきを止めてしまっている食品に健康効果はありません。
アトピーやぜん息の人は注意
調理で加熱された酒精は、揮発性有機化合物として空間に漂うことがあります。
そのため、アトピーやぜん息の持病をもつ人はこの物質に反応して、症状があらわれることがあるようです。
もちろんアトピーやぜん息だけでなく、なんらかの化学物質過敏症の人は注意が必要です。
酒精の成分
酒精=アルコール=エタノール=エチルアルコールですから、酒精もお酒と同じです。
食品添加物としてもちいられている以上多量にはなりませんから、普通に食用、引用しているぶんには問題ありませんが、アルコールに弱い人は、とくに摂取量に気をつけたほうがいいでしょう。
酒精を摂取するメリット
酒精がもちいられるのは、二酸化炭素の発生を抑えるためという、あくまでも生産時の都合。
酒精を摂取することによって得られる健康、美容の効果はとくにないので、できれば酒精の使われていないものを選びましょう。
とくに味噌は、本来、大豆・こうじ・塩のみで作られる発酵食品です。
その健康効果は立証されており、がんの予防に役立ったり、生活習慣病を改善したり、骨粗鬆症や老化を防いだりとさまざまな嬉しい効果が得られます。
そういったせっかくの効果、効能も、酒精を添加することで台無しになってしまうのです。
酒精の効果や効能を得る
せっかくの効果や効能を得るためにも、食品はできれば酒精が使われていないものを選びたいものです。
しかしながら、摂取したからといってとくに危険性が高い物質ではないことも確か。
すすんで摂りたい成分ではありませんが、かといって、どうしても避けなければいけないとまでは考えなくても大丈夫ですよ。
イーストフード
パンの原材料名に、イーストフードと書かれていることがあるのはご存知でしょうか。
パンを作るためにはイースト菌を使うというのもよく聞きますから、このイーストフードというのがそれだと思っている人も多いかもしれませんね。
ですが、イースト菌とイーストフードは、実は別物。
では、このイーストフードとは一体何なのでしょうか。どういった目的で使用され、そして私たちの身体にとって毒性はないのか、気になるところを調べてみました。
イーストフードとは
イーストフード
イーストフードとは、食品添加物の一つ。生地改良剤と呼ばれることもあります。
パンは小麦粉を発酵させて作りますが、その際、イーストフードを入れるとイースト菌(パン酵母)が活発になり、短時間で大量のパンを作ることができるのです。
つまり、イーストフードとは、イースト菌(パン酵母)の栄養源です。
イーストフードの種類
イーストフードとは、特定の何かを指すわけではなく、イースト菌(パン酵母)を活発にさせるはたらきをもった物質の総称です。
現在のところ、以下の16種類の物質が食品添加物としてイーストフードに指定されています。
- 塩化アンモニウム(合成添加物)
- 塩化マグネシウム(合成添加物)
- 炭酸アンモニウム(合成添加物)
- 炭酸カリウム(合成添加物)
- 炭酸カルシウム(合成添加物)
- 硫酸アンモニウム(合成添加物)
- 硫酸カルシウム(合成添加物)
- 硫酸マグネシウム(合成添加物)
- リン酸三カルシウム(合成添加物)
- リン酸水素二アンモニウム(合成添加物)
- リン酸二水素アンモニウム(合成添加物)
- リン酸一水素カルシウム(合成添加物)
- リン酸二水素カルシウム(合成添加物)
- グルコン酸カリウム(合成添加物)
- グルコン酸ナトリウム(合成添加物)
- 焼成カルシウム(天然添加物)
焼成カルシウムを除くすべてが化学合成によって作られる合成添加物です。しかし、焼成カルシウムも天然のカルシウムを高温処理して別の物質に変化させているわけですから合成添加物といってよいかもしれません。
一括表示が認められているイーストフード
どのイーストフードを使用するかはメーカーによって異なりますが、大抵の場合、16種類のうち4~5種類の物質が使われているようです。
しかし、イーストフードは一括表示が認められており、原材料名にどの物質を使ったのかを記載する義務はありません。「イーストフード」と書けばそれでいいのです。
ちなみに、一種類しか使っていない場合は、イーストフードと記載できません。
そのため、イーストフードと書かれていれば、その時点で二種類以上の物質が入っているということになります。
一括表示の問題点
一括表示が認められていると、そのほかの目的で使った成分があっても記載されないという問題があります。
たとえば、保存料として使われた物質があったとしても、その物質がイーストフードに指定されていたとしたら、そのほかのものと一まとめにしてイーストフードとのみ記載されてしまうのです。
そうすると、原材料名に保存料の文字はなくなります。
イーストフードを使うメリット
イーストフードを使う目的はコスパです。
イーストフードを使うと短時間で大量のパンが生産できますし、見た目もふっくらしていてとてもきれいです。
それなのに、使用する小麦粉はイーストフードを使わないものと比べて7割ほどですむのです。
イーストフードと乳化剤
乳化剤とは
乳化剤とは、パンを作る際にイーストフードとともにもちいられる食品添加物です。
その名のとおり、乳化をうながすために使われる食品添加物で、そのままでは混ざりにくい物質同士をなじませるために利用されます。
乳化剤も一括表示が認められている
乳化剤も、イーストフードと同じように一括表示が認められている食品添加物です。
食品に乳化剤として使用されているものには次のようなものがあります。
- グリセリン脂肪酸エステル(合成乳化剤)
- ショ糖脂肪酸エステル(合成乳化剤)
- ソルビタン脂肪酸エステル(合成乳化剤)
- ポリソルベート(合成乳化剤)
- ステアロイル乳酸カルシウム(合成乳化剤)
- レシチン(天然乳化剤)
イーストフードの危険性と毒性
専門家の意見
そもそもイーストフードが安全なのか危険なのかについては、専門家の意見も真っ二つにわかれています。
イーストフードが安全だとする意見は、専門家が試験を重ねた上で問題ないと確認できた物質しか食品添加物として認められていないこと、生涯摂取しても大丈夫な量しか使われていないこと、体内に入っても安全な物質に変化するかすぐに排出されること、など。
反対に、危険とする意見は、個々の安全性は確認されていても、イーストフードは複数組み合わせて使われる場合が多いため、物質同士が組み合わさったときの反応がわからないというものです。
塩化アンモニウムに注意
イーストフードに指定されている物質の一つに、塩化アンモニウムがあります。
この物質は通常化学肥料に使われているもの。大量に摂取すると嘔吐や昏睡を起こす危険性があるとされており、犬の場合、6~8gの摂取で死に至ることが確認されています。
リン酸塩類に注意
イーストフードにいくつか指定されているリン酸化合物ですが、これらは骨粗しょう症や心筋梗塞につながるおそれがあるといわれています。
臭素酸カリウム
イーストフードを使うと、効率よくふっくらとしたパンが焼きあがります。
しかし、そのためにはイーストフードとともにビタミンCなどの酸化防止剤や酵素剤、もしくは臭素酸カリウムを使う場合があります。
前者の場合は問題ないのですが、後者の臭素酸カリウムには問題があり、危険性、毒性が指摘されています。
実際、臭素酸カリウムは国際ガン研究機関(IARC)において発がん性が認められる物質であるとされており、国際連合食糧農業機関・世界保健機関合同食品添加物専門会員会(JECFA)でも遺伝子障害性発ガン性物質に指定されています。
それを受け、EU諸国やカナダ、ナイジェリア、ブラジル、ペルー、スリランカ、中国など多数の国で使用禁止になっているのですが、日本ではパンの製造に限り、残留しないことを条件に使用が認められているのです。
イーストフードは賛否がわかれても、こちらの臭素酸カリウムは可能な限り避けたいところですね。
赤ちゃんが食べても大丈夫か
パンといえば、赤ちゃんの離乳食にする人も多いと思います。
イーストフードは、もちろん赤ちゃんが食べても大丈夫なように、量などの基準がもうけられていますが、できれば避けたほうがいいでしょう。
理由はもちろん、イーストフードが一括表示出来ること、その中には塩化アンモニウムなどの避けたい物質が含まれているかもしれないからです。
絶対に与えてはいけない、と神経質になる必要はありませんが、回避できる機会は回避しておいたほうがいいのではないでしょうか。
イーストフードと乳化剤を使ったパンの製造法
パンの製造方法の代表として以下の2種類をご紹介します。
ストレート法
ストレート法は、全材料を一度にミキシングして生地を作る製法です。(特殊な配合は除く)
小麦粉に砂糖、食塩、脱脂粉乳、ショートニング、乳化剤、イースト(パン酵母)、水などを一度に混ぜ合わせて生地を作り発酵を経て焼成して作ります。
このストレート法の場合はイーストフードは必要ありません。
この製法は少量生産に向いていて、ホームベーカリーにも採用されています。輸送の必要が無く焼き立てを食べきるのであればイーストフードだけではなく乳化剤も必要ありません。
ただしショートニングに関して一つ注意点があります。ショートニングにはトランス脂肪酸の問題があるため家庭で作る場合はトランス脂肪酸が入っていないものを選ぶようにしましょう。
ショートニングの代わりにパーム油や米油などを使えばトランス脂肪酸は少なくなります。
ストレート法は日持ちしないという欠点がありますが家庭で作るときは問題ありませんよね。
中種法
中種法は、小麦粉にイースト、イーストフード、水を加え中種という生地を作り発酵させたあとミキサーに移します。
そこに小麦粉、砂糖、食塩、ショートニング、脱脂粉乳、水などとそのほかの添加物(乳化剤など)を加えて焼成して作ります。
中種法の特徴として、機械による生産に合っていて大量生産に向いています。また、日持ちするといった特徴もあります。
効率よくたくさん作るためにはイーストフードと乳化剤が必要でしたが、現在はイーストフードと乳化剤がなくても大量生産できる製法も考えられていますが少しだけお高めです。
イーストフードを使わなくてもパンはできる
パンを作る際に、イーストフードも、乳化剤も、必ずしも入れなくてはならないものではありません。
実際、両方とも不使用なものはたくさんあります。
少しの価格差で安心、安全が手に入るのなら、できればイーストフードも乳化剤も使われていないものを選びたいものですね。
消泡剤
夏は冷奴で、冬は鍋物でと、一年中食卓にのぼる豆腐。ヘルシーで身体にいいし、とてもありがたい食材ですよね。
しかし、大豆とにがりだけ作られているイメージの強い豆腐にも、実は色々と入っている場合があることをご存知でしょうか。
たとえば、消泡剤。なめらかで、つるんとした豆腐に仕上げるためにつかわれる食品添加物なのですが、これはいったいどういうものなのでしょうか。身体に害はないのかどうか、調べてみました。
消泡剤とは
消泡剤とは、その名のとおり泡を消すためのものです。
豆腐の原料は大豆ですが、大豆の中にはサポニンという成分が入っています。
このサポニン、実は天然の界面活性剤(乳化剤)の一つで、水に溶かすとまるで石けんのように泡立つ性質を持っているのです。そのため、豆腐を製造するときにはどうしても大量の泡が発生するので、それをなんとかしないと気泡だらけの豆腐になってしまいます。
それを何とかするために消泡剤、つまり、泡を消すためのものが必要になってくるのです。
泡を消さないと
家庭菜園で作る野菜は不格好だし、安心できる食品は見た目があまりよくないことはわかっている……そう思う人もいるかもしれませんね。
ですが、気泡だらけの豆腐の場合、見た目の問題だけではありません。気泡だらけということは、豆腐がたくさん空気に触れているというわけですから、日持ちが悪く、腐りやすくなってしまうのです。
また、製造している最中に次から次へと泡立ってくるわけですから、これをなんとかしないと吹きこぼれなどいろいろな問題も発生してしまうでしょう。
もちろん、消泡剤以外に手段がないわけではありません。
事実、本来の豆腐作りでは、この泡をすくい取ったり、何度も布でこしたりして泡をなくしてきました。
ですが、それではどうしてもコストがかかる上に生産数も落ちてしまいます。
そのため、手っ取り早く泡を消すために、消泡剤がもちいられるのです。
消泡剤の種類とその成分
消泡剤には、シリコーン系消泡剤と有機系消泡剤があります。
シリコーン系消泡剤
タイプや特性、用途によって、オイル型・溶液型・オイルコンパウンド型・エマルジョン型・自己乳化型にわかれます。水性、非水性(油や溶液)両方の発泡液で消泡力を発揮します。
有機系消泡剤
界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコールなどの種類があります。水性の発泡液にて、強い消泡力をもちます。
豆腐に使われるのはたいていシリコーン系消泡剤のエマルジョン型。成分は、ケイ素、もしくはグリセリン脂肪酸エステルがほとんどです。
ただし、これらの消泡剤は最終的に豆腐の中に成分が残らないことと、加工助剤に分類されることから、製品の原料として表示されることはありません。
消泡剤の原理
泡をなくすためには、すでに出来ている泡を消すことと、これから出来ようとする泡の発生を抑えることの二つの働きが必要になってきます。
すでに出来ている泡を消す原理は、表面張力の小さい物質を泡の中に送り込んで、周囲の高い表面張力に引っ張らせて泡を消すこと。
これから出来ようとする泡を抑える原理は、泡が出来ようとしている部分を表面張力の小さい物質が取り囲み、アンバランスな表面張力により泡ができなくなるということです。
消泡剤不使用の豆腐
消泡剤不使用でも、使用されていても、豆腐の見た目はそれほど変わりません。
なぜなら、大豆にサポニンが含まれている以上、製造途中で泡が発生するのは避けられないことだから。消泡剤不使用の豆腐は、消泡剤を使わないぶん手間ひまをかけて泡を取り除いているわけです。
見た目こそ変わりませんが、消泡剤不使用の豆腐とは、まぎれもなく大豆とにがりだけで作った豆腐だといえるでしょう。
消泡剤の害とは
消泡剤は、食品添加物の一種ではありますが、カテゴリーとしては加工助剤です。
すなわち、出来上がった豆腐の中に、成分は一切残りません。成分が残らないのですから、消泡剤による害もないと言えるでしょう。
とはいえ、最初から一切使われていないのと、使われたけれど成分がなくなったのでは、気持ち的には差があるかもしれませんね。
ただし、「大きなメーカーは仕方ないけれど、町の小さな豆腐屋さんなら消泡剤不使用の豆腐を売っているはず」というわけではありません。
なぜなら、消泡剤不使用の豆腐を作るためには、大型の鍋や密閉型の釜などしっかりした設備が必要ですし、常に火加減を気にしている必要もあるから。
つまり、消泡剤を使っているからといって、品質がよくないというわけではないのです。
消泡剤の摂取
豆腐作りにおいて、消泡剤の使用は仕方のない部分があるようです。
もちろん、すすんで摂りたい成分が入っているわけではないので、避けたい人は避けても何の問題もありません。
ただ、豆腐に限っていえば、安全性の高い消泡剤の使用、不使用よりも、もっとほかに気を配ったほうがいいかもしれませんね。たとえば、原料の大豆が遺伝子組み換えでないかなど。
身体にいいものを取り入れたいのはもちろんですが、避けるべきものの優先順位も見誤らずにいたいものです。
ノルマルヘキサン(n-ヘキサン)
ノルマルヘキサンという物質をご存知でしょうか。
ノルマルヘキサンとは、ガソリンに含まれている石油系の溶剤のこと。そんな物質が、食品と一体なんの関係が? と、驚く人も多いと思いますが、実は、大いに関係があるのです。
なぜなら、サラダオイルや食品添加物を作るときには、このノルマルヘキサンが使われているからです。
果たして、ガソリンに含まれているような物質を食品にもちいて、人体に危険性や毒性はないのでしょうか。
ノルマルヘキサン(n-ヘキサン)の用途
ノルマルヘキサンはガソリンに多く含まれている石油系の溶剤なので、灯油のようなにおいがします。
しかし、食品衛生法では、最終的に食品の中にノルマルヘキサンの残留物がない場合、使用が認められているのです。
食品の用途
ノルマルヘキサンは、油脂の洗浄や抽出に使われることの多い物質です。
そのため食品では、原料から油の成分を抽出してサラダ油を作ったり、大豆を脱脂加工したりするためにもちられるようです。
また、添加物を生成する際にも、原料から成分を抽出するためにノルマルヘキサンが使われる場合が多いです。
米油は、米ぬかからノルマルヘキサン(n-ヘキサン)を使って抽出されていますが油の生成過程で蒸留によって完全に取り除かれています。
食品以外の用途
ノルマルヘキサンには油脂の洗浄能力がありますから、なにかの材料の油脂汚れを落とすためや、車のメンテナンス等にももちいられています。
ホームセンターに行けば、ブレーキクリーナー、パーツクリーナー等の名称で売られていますよ。
しかし、これらの商品には、人体に有害であるため、決して吸入しないようにとの注意書きがあります。
ノルマルヘキサン(n-ヘキサン)に毒性
ノルマルヘキサン自体は、人体に有害な物質であり、劇薬です。国から劇薬としての指定はされていませんが、以下のような特徴があります。
- 引火性が高い。
- 蒸発して空気との混合気体は爆発性がある。
- 吸入するとめまい、嗜眠、感覚鈍麻、頭痛、吐き気、脱力感、意識喪失が起こる。
- 皮膚につくと皮膚の乾燥、発赤、痛みが起こる。
- 食べてしまうと腹痛になる。
食品にノルマルヘキサンをもちいる際には、残留のないことを使用条件とされていますので、扱いとしては原材料などではなく加工助剤。そのため、表示義務もありません。
ノルマルヘキサンの使用に関する人体への毒性および安全性は、厚生労働省が定める食品添加物公定書の中で定められた成分規格と厚生労働省が定めるノルマルヘキサンの使用条件を満たしていることが条件で使用が認められているので、ノルマルヘキサンを使用している食品に毒性はないと国は見ています。
成分規格ではノルマルヘキサンの性状については無色透明な揮発性の液体で特異な臭いがあるなどのほか、屈折率や比重、蒸留試験などの成分の規格に沿ったものであり、尚且つ厚生労働省が定める使用制限では食用の油脂製造の際の油脂の抽出に限り使用が許され最終食品の完成前に除去されることを条件に使用が許可されているので、毒性の危険はないとされています。
現在日本の食品に関する安全性の評価は、平成15年内閣府に設置された「食品安全委員会」が、食品安全基本法に基づき食品の毒性やその食品が人体に有害であるか否かを評価して食品安全行政を行っています。
しかしノルマルヘキサンに関しては食品安全委員会が発足されるかなり以前から油脂の抽出に使用されており、現在食品安全委員会ではノルマルヘキサンの毒性に対して評価はなされていません。
しかしながら食品安全委員会としてはこの委員会が発足される以前に厚生省で定められたノルマルヘキサンの成分規格と使用基準をもとに、ノルマルヘキサンは沸点68℃で食品から除去され、最終食品の完成前には完全に除去されなければならないという条件の下でノルマルヘキサンは使用され、使用された食品には毒性の心配はないと考えているとのことです。
すべての油に含まれているではない
ガソリンに多く含まれる……そんなことを聞くと、ノルマルヘキサンは可能な限り避けたいですよね。
しかし、サラダ油を作るときに必要とのことですから、完全に避けるのは難しいのではないかと心配する人も多いと思います。ですが、大丈夫。ノルマルヘキサンは、すべてのサラダ油の精製に使われているわけではありません。
ノルマルヘキサンを使う理由には、もちろんコストもあるでしょうから、それを使用してできあがったサラダ油の値段も安いはず。
避けるためには、多少の出費は伴いますが、それでも、安全性を考えてのことであれば、決して高くはないのではないでしょうか。
亜酸化窒素
手術の際の医療用や工業用としても燃料の発火促進に使われている亜酸化窒素は、世界でも20カ国以上で食品添加物として用いられています。
亜酸化窒素とは
窒素酸化物の一種である亜酸化窒素は、1772年イギリス人の化学者により発見されました。沸点は-90.86℃で無色のにおいの無いガスです。
食材をムース状にする調理法で使用するため2006年4月に食品添加物として認可されました。別名「笑気ガス」と呼ばれており、手術の際の全身麻酔や歯科治療での痛みを和らげる鎮痛剤として利用され、2016年2月に厚生労働省より医薬品医療機器法に基づく指定薬物に指定されています。亜酸化窒素は毒性はなく、麻酔性があるガスになります。
亜酸化窒素ガスを使ってエスプーマを作る
生クリームを泡立て器やハンドミキサーでホイップクリームを作るのには、時間や労力がかかります。
しかし亜酸化窒素ガスを使用した調理器具エスプーマを使用すると、簡単に生クリームをホイップクリームにすることができます。
専用の加圧容器に材料を入れ密閉し、亜酸化窒素ガスの入ったカートリッジ式のボンベを充填します。器具全体を振り、ノズルを操作するとキメの細かいホイップクリームが出てきます。生クリームだけでなく、通常ムース状にするのは困難な果物や野菜などあらゆる食材を軽い泡状にすることができます。
二酸化炭素でも食材を泡状にすることができますが、味が酸っぱくなる欠点があります。亜酸化窒素は食材の風味や香りが損なわれず、70℃までなら温かい物も冷たい物も簡単にムース状に使用することできます。容器の中の気体の圧力により、食品と亜酸化窒素の混合物がバルブから放出され発泡する仕組みです。
直接吸引する危険と副作用
亜酸化窒素は吸入すると酸素と混合し、陶酔効果や意識が朦朧とする酩酊状態になります。また、気分が高揚し笑ってしまう効果があるため、笑気ガスとも呼ばれています。医薬品医療機器法に基づき、亜酸化窒素は指定薬物に指定されており、手術や歯の治療で麻酔として使用しようする際は、個人によって使用する量が医師のもと決められます。医療では亜酸化窒素の濃度が高くないため副作用がほとんどなく、安全性が高いと言われていますが、亜酸化窒素の危険性が高いと言われているのは、多幸感を求めて一度に沢山の量を吸入するからと言われています。亜酸化窒素の濃度が一気に高くなると、その分酸素の濃度が低くなり、その結果脳が酸欠状態になります。最悪の場合、心肺停止を引き起こし死亡するケースもあります。
カラメル色素
カラメル色素は、あらゆる着色料の中で最も使用される食品の多い食品添加物と言われています。カラメルは料理や製菓の際に作ることもできるものですが、食品添加物としてのカラメルとは一体どのようなものなのでしょうか。
カラメル色素とは
カラメル色素は、ブドウ糖や砂糖などの糖類やでんぷんなどの加水分解物や糖蜜などを加熱処理することによって製造されます。製法の違いにより4つの種類がありますが、全て淡褐色〜黒褐色をしています。
カラメル色素は、水に溶けやすく、油分や有機溶媒には溶けにくいという性質のほか、光や熱、phの変化に強く、色調変化を起こしにくいとされています。
そもそも、カラメルそのものは日本では明治初期にドイツから輸入されたのを機に、それを利用した食品が作られるようになったとされています。大正時代から昭和初期の頃には、醤油や佃煮類に使用され、戦後の経済成長以降は、食の洋風化も進んだことから、より多くの食品や飲料に使用が拡大されてきました。
それぞれの特徴
カラメル色素には、亜硫酸化合物やアンモニウム化合物を製造の際に加えるか否かという製法によって、カラメルⅠ〜Ⅳの種類に分かれます。
カラメルⅠ
カラメルⅠは従来からの製法で、単に糖類のみを加熱してできたものを指します。この製法は他に比べコストはかかるものの、毒性はなく非常に安全性は高いとされています。
カラメルⅡ
カラメルⅡは、糖類に亜硫酸化合物を加えて加熱したものですが、現在、日本ではこの製法は禁止されています。
カラメルⅢ
カラメルⅢは糖類にアンモニウム化合物を加えて加熱したものです。
カラメルⅣ
カラメルⅣは、糖類に亜硫酸化合物もアンモニウム化合物も加えて加熱したものです。
カラメルⅢとカラメルⅣにはアンモニアが使用されていますが、これらが現実的に日本では多く使用されている製造法とされています。
危険性と使用できない食品
カラメル色素の製造法で、カラメルⅢとカラメルⅣにおいてはその危険性が指摘されています。これらには、アンモニウム化合物が使用されており、その製造過程で「4−メチルイミダゾール」という発がん性のあるとされる物質ができることが知られています。
しかし、食品の成分表示には、一般的に「着色料(カラメル)」「カラメル色素」とだけしか記載されていないことが多く、私たちにはその製法まではわからないというのが現状です。
このような危険性のあるカラメル色素ですが、食品や飲料の着色に非常に有用とされているようです。代表的な例としては、清涼飲料水、乳飲料、菓子類、醤油、ソース、カレールウや麻婆豆腐などの料理の素、漬物などが挙げられます。また、ウイスキーなどには品質調整のための製造用剤として使用されることもあります。
非常に多岐にわたる食品や飲料に使用されているカラメル色素ですが、使用基準の関係上、使ってはいけないものもあります。これは、カイガラムシを原料としたコチニール色素などと同様で、昆布類、食肉、鮮魚貝類、お茶、海苔類、豆類、野菜、わかめとされています。なお使用量の制限については規定はないようです。
水酸化カルシウム
水酸化カルシウムって何に使われているかご存知でしょうか?その名前だけ聞いても、すぐにピンと来る人は少ないかもしれませんが、別名を聞くときっとご存知の方は多いことでしょう。一体どのような物質なのでしょうか。別名は消石灰
水酸化カルシウムとは
水酸化カルシウムは、別名で消石灰とも呼ばれています。
酸化カルシウムに水を加えると生成することができます。水に溶かしたものを石灰水と呼び、これは強いアルカリ性を示します。消石灰や石灰水という言葉を聞くと、学生時代の理科や化学の実験を思い出す人もいることでしょう。化学的に特徴のある物質なので、よく取り扱われるようです。
この水酸化カルシウムは、食品添加物、工業、農業、建築、水処理など、私たちの暮らしの至るところで使用されています。例えば、建築の場面では、水酸化カルシウムに植物や海藻の繊維などを混ぜて作る漆喰として使用されていたり、水処理の場面ではphの調整や殺菌・消毒などの働きをするものとして使用されていたりします。表立ってはいないものの、非常に大切な役割をしている物質なのです。
こんにゃくの凝固剤としての用途
水酸化ナトリウムは、昔からこんにゃくを凝固させるために使用されています。
こんにゃくに含まれるグルコマンナンは、アルカリ性の水酸化カルシウムや炭酸ナトリウムなどを加えることで固まる性質があります。さらに、そのアルカリ性の強い物質であるほどこんにゃくのぷるぷるとした弾力が出せることから、その傾向のある水酸化カルシウムは使用されることが多いのです。
こんにゃくの他にも豆腐やソーセージ、ガム、水飴、寒天などにも使用されています。
また、水酸化カルシウムは、主成分がカルシウムであることから、その強化剤としても使用されることがあります。医療の現場では、内服薬や注射液にカルシウムを補給する目的で多く使用されているようです。その他にも歯科材料やギプスなどにも使用されています。
水酸化カルシウムの毒性や危険性
水酸化カルシウムは、強塩基の性質を持つがゆえにタンパク質を容易に分解できます。そのため、ヒトの皮膚や粘膜を傷つける可能性があります。特に目に入ってしまうと、最悪の場合失明するおそれのある危険な物質です。このようなことから、かつて学校で校庭に白線を引くのに利用されていた水酸化カルシウムですが、2000年代に入って文科省からの通達により、他の物質を使うこととされています。
食物にこのような危険な物質が使われているとなると、少し恐ろしい気もしますが、水酸化カルシウムは微量であれば、摂取しても胃酸で中和されるので問題ないとされています。しかし、大量に摂取してしまうと呼吸器系の障害や肝臓や腎臓への悪影響などを引き起こす危険性があるということで注意が必要です。ただ、食品添加物に使われている程度の量を時々摂取するというのであれば、特に心配をする必要はないと言えるでしょう。
シュウ酸
ほうれん草は鉄分や葉酸そしてビタミンやミネラルが豊富で、これから冬を迎える上で旬を迎える美味しい野菜の一つです。栄養価が高いからこそ健康のために食べたい野菜に入るのですが、しかしほうれん草には一つだけ注意しなければならない成分もあります。それがシュウ酸と呼ばれる結晶体が含まれていることです。
シュウ酸とは
ホウレンソウに含まれていることで知られるシュウ酸とは、どんな性質をもつ成分か改めておさらいすることにします。この成分の正体というのはジカルボン酸と呼ばれるもので、土中にあるミネラルを吸収するために植物が自身の体で作り出す成分です。
一般的には土中のミネラル成分カルシウムを吸収するために作り出すので、カルシウムと結合するとカルシウム酸塩という形になります。ただ自身の体を成長させるためにはカルシウムだけでは不十分なので、それ以外のミネラルも吸収できるようになっています。
例えば、土の中に含まれているミネラル成分のナトリウムを吸収した場合にはシュウ酸ナトリウムとなりカリウムを吸収した時にはシュウ酸カリウムという事になります。そして人間が野菜を食べた時に苦みに近いえぐみや刺激するような感覚が口の中で起きるときには、大抵は灰汁という概念で扱われています。しかし実際には灰汁も含めて、この成分が口の中に入ることによってえぐみや刺激として感じるのです。
シュウ酸を多く含む食品
シュウ酸は植物が土の中のミネラル分を吸収するために作り出す成分なので、すべての野菜類にひとしく含まれている成分です。ただ含有量においては違いがあり、その含有量の中でも特に多く含む食品を知っておくことが尿路結石や骨粗鬆症を防ぐうえで大切になります。
一番多く含まれているのはホウレンソウであり、ホウレンソウの含有量は食べる量が100グラムで換算すると770ミリグラムと断トツで多いです。それ以外に100グラム換算で計算すると多く含む野菜には小松菜の場合では50ミリグラムと春菊では30ミリグラムとなっています。
これらの野菜を食べても良い目安としては、最も多いホウレンソウで換算すると平均4束から6束で1キログラム以下となります。
それ以上食べると余分に溜まったシュウ酸が血中や尿の中のミネラルと結合してしまうため注意です。
ただシュウ酸は水に溶けやすい性質を持っているので、食べるときには旬の時期であっても生で食べずに下ゆでするか大腸の血管に吸収される前に脂質やたんぱく質で覆えば無害化できるのでお勧めです。
シュウ酸の用途
尿路結石や骨粗鬆症の原因と言われるため体に良くない成分として扱われてきたシュウ酸ですが、実は食品添加物として使われていることが多いです。
どんな形で使われているのかというと、先に言ったとおりにシュウ酸はミネラル成分を吸着して一つの固まりにする性質を持っています。
その性質をうまく利用したのが豆腐の凝固作用であり、豆腐は豆乳の中にミネラル成分のにがりを加えて固めるのですがその中にシュウ酸を加えることでよりかためる力を強くすることができます。ただしシュウ酸は豆腐凝固剤という一括表示ができません。
それ以外にも中華麺を作る時に使われるミネラル成分が入ったかんすいの中に加えることによって小麦との吸着を強くしてコシを生み出したり、ハムやソーセージの中にもミネラル成分の塩と共に入れることでまとめやすくします。
このように材料を固める食品を作る際に食品添加物として使用することで、ミネラル成分を固めて一つにする性質が食品の凝固の成功率を上げてくれます。
臭素酸カリウム
臭素酸カリウムは昭和28年3月25日に認可された食品添加物です。使用基準は小麦粉1kgに対し0.030g(30ppm)以下となります。
臭素酸カリウムは物質を酸化させる作用を持ち、タンパク質やグルテンに作用して膨らみ方や食感を向上させるということでパンなどの小麦を使用する食品やかまぼこ、魚肉ソーセージなどに使用されていました。しかし発がん性の疑いが強くなり一度は使用禁止となりました。
しかしヤマザキ製パンは焼き上がったパンに臭素酸カリウムに残存しないことを化学分析で明らかにして使用を続けていましたが、現在では一切使用していないということです。
確かにヤマザキ製パン側からしてみたら使用量を守ってさらには最終製品には残存しておらず厚生労働省も認めているのですから文句を言われる筋合いはないような気がします。
よく大手パンメーカーのパンが長期間かびないのは臭素酸カリウムが入っていたからだと言われますがほぼ関係ないといえます。
大手パンメーカーの工場は、一般家庭とは比べものにならないくらい衛生的です。ほぼ無菌状態で製造された製品は、カビにくくて当然といえます。
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