小腸
小腸はからだのなかでいちばん長い臓器でグルグルになっています。
小腸〈空腸(くうちょう)・回腸(かいちょう)〉は、胃や十二指腸で消化された食べ物をさらに分解し、栄養素を吸収するはたらきをしています。十二指腸も小腸の一部ですが、一般的に小腸とは空腸・回腸のことをいいます。小腸はからだの中で最も長い臓器ともいわれ、約6メートルほどあります。「小腸の内側を広げるとテニスコート1面の4分の1ほどの面積になる」ともいわれています。
小腸の仕組み
たくさんのヒダ状になっていて、栄養をムダなく吸収したり、免疫(めんえき)細胞たちが外敵(がいてき)とたたかったりして胃で消化した食べ物を細く消化したりしています。
①小腸の栄養吸収<腸絨毛(ちょうじゅうもう)>のしくみ
小腸の粘膜(ねんまく)には、腸絨毛という無数の突起(とっき)があり、ビロード〈やわかい布の一種〉の絨毯(じゅうたん)のようになっています。腸絨毛があることによって、表面積が大きくなり、より多くの栄養素を吸収できます。腸絨毛はからだの組織に必要なほぼすべての物質を吸収します。水、ミネラル、糖、アミノ酸、ビタミンなどが絨毛(じゅうもう)を通って腸のなかの血管に入って行いきます。
②小腸の粘膜免疫(ねんまくめんえき)<パイエル板>のしくみ
外部からの抗原(こうげん)〈細菌(さいきん)やウイルスなど〉に直接さらされている腸管の内側では体内の免疫※細胞(さいぼう)の50%以上が集中しており、ユニークな免疫機能を持っています。その代表は腸管の上皮にあるパイエル板というシステムです。M細胞という特殊(とくしゅ)なかたちの細胞がいて、抗原を免疫細胞の集まっているパイエル板へ誘導(ゆうどう)し、免疫細胞の樹状(じゅじょう)細胞、リンパ球のT細胞とB細胞、形質(けいしつ)細胞などによって処理しています。
※免疫:細菌やウイルスなどから私たちを守ってくれる防御(ぼうぎょ)システム。
小腸の消化・吸収しくみ
酸素をたくさんふくんだ小腸液で消化し細く消化するだけでなく、いろいろな栄養素を吸収しています。
小腸での消化
小腸では酵素(こうそ)をたくさんふくんだ小腸液(しょうちょうえき)が作られています。この酵素は、胃から運ばれてくるどろどろの粥(かゆ)状になった食べ物をほぼ完全に消化します。例えば、炭水化物を細かくして麦芽糖(ばくがとう)・ぶどう糖にしたり、脂肪(しぼう)を細かくして脂肪酸(しぼうさん)とグリセリンにします。このようにして作り変えられた栄養素は腸に吸収されます。
吸収された栄養素は血液によって肝臓(かんぞう)に運ばれ、残りのどろどろの粥(かゆ)状の物質は大腸へ運ばれます。小腸と大腸は、回盲弁(かいもうべん)で分けられています。回盲弁は、大腸の中の物質が小腸に逆流しないように開いたり閉じたりしています。
小腸の病気
「クローン病」
【どんな病】クローン病は、小腸の代表的な病気といわれています。口から食道・胃・腸・肛門(こうもん)までの消化管に炎症(えんしょう)、潰瘍(かいよう)などができる病気です。特に小腸と大腸がつながる回盲部(かいもうぶ)によく見られ、多くは10〜20代に発症(はっしょう)します。中高年での発症はほとんど無いといわれます。厚生労働省の特定疾患(とくていしっかん)に指定されていて臨床調査研究分野の対象となっています。いわゆる難病のひとつとされています。【主な症状(しょうじょう)】腹痛、下痢(げり)、下血(げけつ)、熱が出る、体重が減るなどの症状(しょうじょう)をくりかえし、慢性化(まんせいか)します。関節や目、皮膚(ひふ)などに炎症(えんしょう)を起こす場合もあります。【原因】はっきりした原因はまだ分っていません。遺伝によるもの、細菌(さいきん)やウイルスによるもの、食事や生活環境が関係しているのではないかと考えられています。病名のクローンは、第1報告者の内科医ブリル・バーナード・クローンに由来するとされています。【検査方法】血液検査、内視鏡検査、CT検査などを行います。【治療(ちりょう)】根本的な治療法はまだありませんが、炎症(えんしょう)を抑(おさ)える薬、免疫(めんえき)を抑える薬、ホルモン剤などを使用します。また、腸が狭(せま)くなったり、穴があいたりしている場合には手術をすることもあります。食事制限が必要になることも多く、この場合は脂肪(しぼう)や食物繊維(しょくもつせんい)を避(さ)けてください。くわしくは、医師に相談しましょう。【注意】長期にわたる治療が必要な病気です。病状がよくなったり悪くなったりをくりかえすので、安定させてその状態を保つことが重要になります。そのためにも治療を中断しないことが大切です。
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