食品に滑らかさと粘りけを与える食品添加物。海草中のアルギン酸、カゼインなどが用いられています。
ペクチン
ペクチンは、身体にいい成分だという認識をもっている人が多いのではないでしょうか。実際、ペクチンは食物繊維の一種であり、果実や野菜、海藻などに多く含まれている成分です。しかし、このペクチンも、実は食品添加物としてもちいられることがあるのです。一体、どのような目的で使われ、どんな効果があるのでしょうか。いろいろと調べてみました。
ペクチンとは
ペクチンとは、食物繊維(特殊な多糖類)の一つです。
ペクチンはリンゴジュースを製造する際に出る絞り粕や柑橘類の皮などから抽出される天然の食品添加物です。ペクチンには水溶性のものと不溶性のものの二種類あり、前者は熟した果実から、後者は青い果実から抽出することができます。
ペクチンを多く含む食品
ペクチンは、りんご、オレンジ、レモンといった柑橘類にとくに多く含まれています。
そのほか、オクラやキャベツといった野菜や海藻などにも含まれますが、もっとも有名なものはりんごの皮から抽出されるアップルペクチンでしょう。
ペクチンの正体
ペクチンはゲル化剤であり、植物の細胞壁を作る成分としてセルロースなどの他の構成成分たちと合わさって植物細胞を繋げる役割を持っています。
ペクチンは食物繊維の一つですが、食品添加物という分類として液体をゼリー状に固定する役割や食品の形状を保つための維持的存在、そしてねばり気やとろみをつけるために役立てられています。食品で指すとジャムやアイス、フルーツソースなどにペクチンが使われています。
しかし、このペクチンという成分を果実から採取する際は果実が熟しすぎても熟さなさすぎても本来の効果を発揮することはできません。熟していない果実から採取されるペクチンはプロトペクチンという非常に長い繋がりを持つ性質となるため、水に溶かせず、食品の形状を保つことができなくなるのです。
反対に熟しすぎている果実から採取されるペクチンは果実の中に含まれるペクチンそのものが分解されて形を維持していない状態です。そのため、分解されたペクチンでもゲル化させる力を失ってしまいます。
そのため、食品に使用するペクチンは採取する果実の熟れ具合に十分配慮する必要があり、ペクチンがちょうど良いバランスを保っている状態の果実を選ぶことが重視されます。しかし、初めからペクチンの含有量が少ない果実から食品を製造する場合は食品の形状を維持するために市販されているペクチンを添加してとろみなどを補うこともあります。
ペクチンの効果・効能
ペクチンは健康にも美容にも良く、さまざまな効果・効能があります。
・コレステロールの吸収を抑え、コレステロール値を下げてくれます。コレステロール値が下がるわけですから、それにともなって動脈硬化や高血圧といった生活習慣病も予防できます。
・糖分の吸収を抑えてくれます。これにより血糖値の上昇も抑えられるので、糖尿病が予防できます。
・腸内に乳酸菌を増やしてくれます。乳酸菌は善玉菌ですから、これにより腸内環境が整えられ、便秘や下痢といった症状が改善されます。
それだけでなく、ペクチンは腸のぜん動運動を促進させますから、これによりデトックス効果が得られ、肌の調子も良くなります。
また、腸内環境が整えば栄養の吸収も良くなり、疲労回復や滋養強壮にもつながるでしょう。
食品添加物としてのペクチン
ペクチンには二種類ある
ペクチンは、DEというエステル化度(メチルエステル化の度合い、つまり、どれだけメチルエステル化しているか)によって大きく二種類に分けられます。
DEが50%以上のものをHMペクチン、と50%未満のものをLMペクチンといい、HとLはそれぞれHighとLowの頭文字です。
ちなみに、食品から抽出できるペクチンはHMペクチン。LMペクチンは、必要に応じて脱エステル処理をほどこして精製されます。
使い方と効果・原理
ペクチンは増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料(こりょう)という食品添加物としてもちいられます。
ゲル化剤…ジャムやゼリーなどを固める。
安定剤…氷の感覚をなくし、アイスクリームなどの食感を良くする。
増粘剤…ジュースやソースにとろみをつける。
これには、HMペクチン、LMペクチン、それぞれの特性が利用されています。
・HMペクチン…砂糖やクエン酸などの酸があるとゲル化する。
・LMペクチン…カルシウムなどの2価イオンや乳があるとゲル化する。
食品添加物としての表記
ゲル化剤、増粘剤、安定剤などの糊料は、用途と合わせて物質名を記載することが定められています。
たとえば、増粘剤(ペクチン)など。
ただし、ほかの天然の多糖類と併用した場合は、「増粘多糖類」と表記すればいいことになっています。
ちなみに、天然の多糖類とは、でんぷんやグリコーゲンのことです。
危険性や毒性
ペクチンは現在のところ、合成で作り出すことはできません。
そのため、ペクチンを含む果物や野菜から抽出するしかなく、食品添加物の中では比較的安全性の高いものだといえるでしょう。
ペクチンの入っているジャムは避けるべきか
きちんとしたジャムを選ぶコツは、ペクチンの入っていないものを選ぶことだという人がいます。
しかしこれは、ペクチンが身体に悪いという意味ではありません。
本来ペクチンは果実に含まれているものですから、くだものでジャムを作ろうとした場合、理屈としては何も加える必要がありません。
ですが、ジャムを作る際には砂糖を入れますから、この糖分のぶん、どうしてもくだものの割合は下がります。そして割合のぶんだけ粘性も下がるのです。
そのため、食品添加物としてのペクチンが加えられるのですが、粘性を気にしなければ、このペクチンは必要のないもの。そういった意味で、きちんとしたジャムはペクチンが入っていないものだといわれるのです。
農薬には注意
たとえペクチン自体には問題がなくても、主にくだものの皮から抽出される以上、気を付けたい部分もあります。
それが農薬。
極端に安い商品はコストをおさえるため、ペクチンを抽出するくだものも輸入くだものを使っている場合が多いです。
そして、輸入品には、果肉からも残留物が検出されるほどの農薬が使われている場合がほとんどですからじゅうぶん注意しましょう。
ペクチンは安全性の高い添加物
食物繊維としてのペクチンにはさまざまな健康、美容にいい効果がありますが、食品添加物としてのペクチンにはそれらの効果・効能はないといわれています。
しかし、それでも、なんらかの毒性が発生したり、危険性が生じたりするわけではありません。
できれば食品添加物は摂りたくないと考える人も多いでしょうが、ペクチンに関してはそう気にしなくても大丈夫そうです。
加工デンプン
加工デンプンは法律で決まっている「一括表示」が認められている添加物ではありませんが、複数種の加工デンプンを使用しても表示は「加工デンプン」とだけ記載すればよい食品添加物です。
デンプンとは
デンプンは、植物の葉緑体において光合成が行われることで生成され、種子や茎、根などに貯蔵されています。デンプンは、白色の粉末状をしており、水に溶かしきることは困難です。ただ、水にデンプンを加えて加熱するとだんだんと液質がゲル状に変化し、「糊化(こか)」の状態にすることはできます。さらに、これを冷却すると水に全く溶けない状態である「老化」を起こします。この老化を防ぐために、食品などに添加される際にはトレハロースなどの糖類が併用されることがあります。
デンプンは、トウモロコシ、米、小麦、豆類、ジャガイモ、タピオカなどが原料となっています。ちなみに、トウモロコシのデンプンのことは、別名でコーンスターチとも呼ばれています。デンプンは、そのままの状態で使用されることもあれば、糊化や老化などの特性を活用したものが使用されることもあり、それらの特性を化学的に加工して発生させないようにしたものが使われることもあります。
加工デンプンとは
加工デンプンとは、デンプンの持つ非水溶性や老化などの性質を化学的、物理的、酵素的に加工処理し、さらに機能を付与したり向上させたりしたものを言います。日本では、1960年代にデンプングルコール酸ナトリウムとデンプンリン酸エステルナトリウムが食品添加物としての認可を受けたことを皮切りに、今日まで徐々に加工デンプンは認可されるものが増えています。
加工デンプンの問題点
加工デンプンは、未だにその安全性に関する情報が不足していることが問題に挙げられます。デンプンに化学薬品を加えて、その特性を失わせたり、増強させたりと人為的に操作しているわけなので、何かしら人体には影響がありそうな気もします。また、加工デンプンは、赤ちゃん用のミルクやベビーフードなど乳幼児向けの飲食料に含まれていることがあります。既に、EUでは乳幼児向け食品に、一部の加工デンプンの使用が禁止されています。安全性が不確かなものを、体の発育が未熟な子どもに摂取させるのは避けたいところです。成分表示を見て、気になるようなら子どもに摂らせるのは控えるようにした方が良いかもしれません。
種類別の特徴や用途(使用目的)
加工デンプンには次の12種類があります。化学合成でデンプンの分子構造を変えたものになります。
アセチル化アジピン酸架橋デンプン
アセチル化したデンプンの分子同士にアジピン酸で橋をかけ繋いだ物質です。
低温で糊状になります。加熱した際、水分を抱き込んで膨れるのを防ぐことができます。
トロッとした状態を安定させることができるため、タレ類やソース類、レトルト食品、ドレッシングなどの食品に使用されています。
アセチル化酸化デンプン
次亜塩素酸ナトリウムをデンプンとあわせるとデンプンを構成しているブドウ糖の環が1箇所切れて環ではなくなります。この環ではなくなった物質を酸化デンプンといいます。
この酸化デンプンにアセチルという物質を結合させたものがアセチル化酸化デンプンです。
アセチル化アジピン酸架橋デンプンと同じような働きをします。
アセチル化リン酸架橋デンプン
デンプンをアセチル化させたものにトリメタリン酸ナトリウムを作用させ、デンプンの分子にリン酸の橋をかけた物質です。
アセチル化アジピン酸架橋デンプンとよく似た性質をもち、用途も似ています。
アセチル化デンプン(酢酸デンプン)
デンプンに酢酸ビニルなどを作用させて酢酸基(アセチル基)を結合させたデンプンのことです。
デンプンは低温になると糊状になり粘着性が強い液体になります。
酢酸デンプンは、天ぷら、フライ、冷凍麺などさまざまな食品に使用されています。
アセチル化デンプンは、じゃがいもデンプン、米デンプン、小麦デンプンなど多くの種類があります。他のアセチル化デンプンも同じですが、アセチル基の結合する位置・結合する数によってたくさんの種類のアセチル化デンプンができるのです。
酸化デンプン
アセチル化酸化デンプンと同様に、次亜塩素酸ナトリウムをデンプンとあわせて作られた物質です。
低温で糊状になり、透明で安定した糊状の物質です。
用途は、お餅のツヤ出しや粉末食品(カップラーメンの汁やスープ)などに使用されます。
オクテニルコハク酸デンプンナトリウム
デンプンにオクテニコルコハク酸の酸無水物を反応させて作ります。
水を加えると粘りの強い糊状になります。
オクテニルコハク酸デンプンナトリウムは乳化性がよいので乳化剤としても使用されます。
ちなみに乳化を目的として使用した場合の食品への表示は加工デンプンではなく「乳化剤」となります。
ヒドロキシプロピルデンプン
デンプンにプロピレンオキシド、またはプロピレンオキサイドを化学反応させて作ります。
プロピレンオキシド、またはプロピレンオキサイドは酸化プロピレンと呼ばれ、動物実験で発がん性が認められています。このことは厚生労働省も認めています。
欧州ではヒドロキシプロピルデンプンを幼児向けの食品に使用することを禁止しています。
冷凍に耐え、デンプンの老化防止に効果があるとされ、冷凍食品などに使用されます。
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン
ヒドロキシプロピルデンプンと同様に欧州では幼児向け食品への使用は禁止されています。
用途もヒドロキシプロピルデンプンと同じように使用されます。
リン酸化デンプン
デンプンにリン酸化合物を反応させて作られます。
冷凍耐性、デンプンの老化防止に効果があり、冷凍・冷蔵食品、フィリング(菓子パンやサンドイッチ、ケーキなどの中身)などに使用されています。
リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン
リン酸化デンプンに猛毒のオキシ塩化リンなどを加えて作られます。
用途はリン酸化デンプンと同じです。
リン酸架橋デンプン
デンプンにオキシ塩化リンなどを作用させて作られます。
他の加工デンプンとはことなり、粘度の強い糊状になりにくい特性を持っています。
パンやスナック菓子などに食感の改良目的で使用されます。
デンプングリコール酸ナトリウム
デンプンをアルカリ性に変えて作られます。
食品には糊料として使用されますが使用量の規制があります。使用できる量は、他の合成糊料とあわせた量が全体の2%以下となっています。
加工デンプンの食品への使用例
加工デンプンは、食品添加物としては増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料、乳化剤の用途で使用されています。具体的には、スナック菓子、生菓子、ドレッシング、冷凍麺類、ホットケーキミックス、ジャムなどに使用されています。デンプンの種類によって、使われる食品は違いますが、一般的に加工デンプンが使用されると食感や味の改善、安定性や乳化を促進させることができるようです。また、比較的安いコストで使用出来ることもあり、食品メーカーにとっては欠かせないものとなっているようです。
加工デンプンの食品への表示
加工デンプンは、化学的に加工され、食品添加物として使用される場合には、「加工でん粉」と表記され、原材料としてのデンプンは、「デンプン」「でんぷん」「澱粉」などと表記されます。また、前述の12種の加工デンプンの種類のうち、デンプングリコール酸ナトリウム以外の11種類については、物質名を表示することが必須ですが、「加工デンプン」「加工澱粉」などの簡略名で表示することも可能とされています。さらに、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料としての用途に主に使用する場合は、その用途も表示する必要があります。ちなみに、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムを乳化剤として使用する際には、「乳化剤」と一括表示が認められています。
加工デンプンについては、表記方法が少し煩雑ですが、知っておくと役立つことがあるかもしれません。
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