ひと昔前なら油と聞くと体に悪いと一言で言われていましが最近では、植物油にはさまざまな種類があり、中には「健康によい」などと聞くものも増えてきて、実際どれを使ってよいか迷いませんか?
迷うのも当たり前のことで、植物油は原料による違いがさまざま。
そんな中で期待される効果や特徴を知り、使い分け方の一つでも知っておきたくないですか?
植物油の種類と期待される効果とは
植物油は原料により、特徴や期待される効果もさまざまです。
ここでは、よく使われる植物油をはじめ、「健康によい」などといわれる植物油まで、いくつかご紹介します。
アマニ油
【原料】アマ(亜麻)の種子
【風味】独特な風味と苦み
【主な脂肪酸】α-リノレン酸
【期待される効果】
- LDL(悪玉)コレステロールを低下させる
- 血糖値を安定させる
- 動脈硬化、脳梗塞、脳卒中の予防
- アレルギー性疾患の予防・改善
- 認知機能や記憶力の向上
- 神経障害や炎症による痛みの鎮痛効果
- 更年期障害の軽減
- 血流の改善
- 免疫力の向上
- 肌や髪のハリツヤをアップさせる
- 自律神経の働きを整える
【特徴と使い方の例】オメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸を含むのが特徴です。
酸化しやすいため生食に向いており、ドレッシングや和え物、料理の仕上げなどに使えます。
市販のドレッシング製品は初めて使う方でも取り入れやすいでしょう。
えごま油
【原料】えごまの種子
【風味】独特な風味と苦み
【主な脂肪酸】α-リノレン酸
【期待される効果】
- 血流の改善 えごま油に含まれるオメガ3脂肪酸の一種であるα-リノレン酸には、血管をしなやかにする働きがあり、血流をスムーズにする効果があります。血栓ができにくい状態にすることで、血圧やコレステロールを下げるなど、生活習慣病の予防につながると考えられています。
- 脳血管性認知症の予防 α-リノレン酸は体内に入るとDHAやEPAに変換され、脳や神経に多く含まれるDHAが脳の栄養素として働き、脳や心臓の病気を予防する効果が期待できます。
- 抗炎症作用 えごま油には抗炎症作用がある「ロズマリン酸」や「ルテオリン」が多く含まれています。
- 整腸効果 えごま油にはヨーグルトの乳酸菌と同様に整腸効果があり、一緒に摂取することで腸内環境を改善し、便通の改善などの効果が期待できます。
【使い方の例】アマニ油と同じく、オメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸を含むのが特徴です。
酸化しやすいため、生食に向いています。
ドレッシングや和え物に使うほか、みそ汁に少量入れるなどの使い方もできます。
オリーブ油
【原料】オリーブの果実
【風味】フレッシュな風味
【主な脂肪酸】オレイン酸
【期待される効果】
オリーブオイルには、オレイン酸やリノール酸などの健康効果の高い脂肪酸や、ビタミンAやビタミンEなどの栄養素が含まれており、次のような効果が期待できます。
- 生活習慣病の予防オレイン酸には悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを減少させない働きがあるため、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などの生活習慣病の予防に役立つとされています。また、オリーブオイルには抗酸化作用もあるため、癌や骨粗鬆症、アルツハイマー病などの予防効果も期待できます。
- 便秘の改善オレイン酸は消化されにくいため、小腸で消化・吸収されずに大腸まで届きます。大腸壁を刺激してぜん動運動を促進させることで便秘に効果的だと言われています。
- 美肌効果オレイン酸には皮膚を柔らかくする効果があり、肌にハリや弾力を与えることで美肌づくりに役立ちます。また、ビタミンEには抗酸化作用があり、肌のアンチエイジング効果も期待できます。
【特徴と使い方の例】植物油の中でオレイン酸の含有量がトップです。
加熱調理から生食まで、オリーブ油特有のさわやかな風味を味わえる料理に使えます。
コーン油
【原料】とうもろこしの胚芽
【風味】とうもろこしの香ばしい香り
【主な脂肪酸】リノール酸
【期待される効果】
- 加熱に強い揚げ物や炒め物など高温の加熱調理に適しています。また、劣化しにくいので揚げた後の料理の保存性にも優れています。
- 栄養素豊富リノール酸やビタミンE、ビタミンB群、ミネラルなどの栄養素を含んでいます。リノール酸は体内で生成できない必須脂肪酸で、血中コレステロール値を下げる効果や、便秘解消効果、脂肪として体に蓄積されづらいといった特長があります。大さじ1杯に約2.2g含まれるビタミンEは効率的に摂取できます。
- 酸化安定性が高い比較的酸化安定性の良い油です。
- エモリエント性がある肌や髪に対して使用されます。肌に対してはエモリエント剤として、髪に対しては艶を出すために使用されます。また、油性基剤としてクリーム系製品やメイクアップ製品などに汎用されています。
【特徴と使い方の例】コーン油には植物ステロールが含まれます。
植物ステロールは悪玉コレステロールの吸収を抑える働きがあることが知られています。
コーンのこうばしい香りを活かす料理に向き、またカラッと揚がるので揚げ物にもぴったりです。
ごま油
【原料】ごまの種子
【風味】香ばしい香りとコク
【主な脂肪酸】リノール酸
【期待される効果】
- 抗酸化作用:活性酸素の攻撃を抑制し、がんや生活習慣病の予防、血管の老化を防ぐ効果があります。
- コレステロール値を下げる:HDL(善玉)コレステロールを減らさずにLDL(悪玉)コレステロールを下げる効果があり、動脈硬化を予防する効果があります。
- 血行を改善する:毛細血管を広げて血行を改善し、血管を強化して心筋梗塞や脳卒中などの予防に効果があります。
- 便秘の解消:腸を活発にして便秘の解消や腸内環境の改善に効果があります。
- 美肌効果:皮膚を柔軟にしてシワの予防、保湿成分で美肌効果があります。
- 二日酔いの改善:ごまに含まれる「セサミン」という成分には、肝臓のアルコール分解を助ける効果があり、お酒を飲む前にゴマ油を摂るとアルコールの吸収を抑えられ、二日酔いの改善も助けてくれます。
【特徴と使い方の例】ごま油にはセサミンが含まれ、悪玉コレステロール値を減らす作用が期待されています。
脂肪酸の中で一番多いのはリノール酸ですが、オレイン酸も多く含みます。
中華料理だけでなく、和食にも幅広く使え、ごまの香ばしい香りを活かし減塩にも役立ちます。
こめ油
【原料】米ぬか
【風味】さらっとした味わい
【主な脂肪酸】オレイン酸
【期待される効果】
米油には、他の植物油に比べて多く含まれる「植物ステロール」という成分が、悪玉コレステロールの吸収を抑える効果があります。
また、米油にのみ含まれる「ガンマーオリザノール」には、脂質の吸収を抑えたり、肝臓でコレステロールが作られるのを防いだりする効果があります。
さらに、米油にはビタミンEやトコトリエノール、ミネラルなどの成分も豊富に含まれています。
ビタミンEは肌を健康で若々しく保つ抗酸化物質で、紫外線やストレスによるダメージから肌を守り、シワやシミの予防に役立ちます。
トコトリエノールはビタミンEの数十倍の抗酸化作用を持ち、活性酸素による細胞へのダメージを防ぐ効果があります。また、ミネラルや抗酸化物質は体内の炎症を抑えたり、免疫機能をサポートしたりする助けにもなります。
米油は、天ぷらや揚げ物、サラダのドレッシングや炒め物など、幅広い料理に利用できます。
油酔い物質の発生が少なく、胸焼けしない油としても知られています
【特徴使い方の例】含まれる脂肪酸はオレイン酸が最も多くなっています。さらっとした軽さがあるので、揚げ物に向いています。ほかの植物油に比べるとオレイン酸が多いため酸化されにくく、加熱に強い油です。
なたね油(キャノーラ油)
【原料】菜種の種子
【風味】無臭であっさり
【主な脂肪酸】オレイン酸
【期待される効果】
- コレステロール値の低下なたね油に含まれるオレイン酸は善玉コレステロールを減らさずに悪玉コレステロールだけを減らすため、動脈硬化や高血圧の予防に効果が期待できます。また、リノレン酸には中性脂肪を下げる働きがあり、血液をサラサラにして動脈硬化を防止する効果も期待できます。
- 抗酸化作用なたね油には抗酸化作用があり、活性酸素の攻撃を抑制することで老化防止や若返り効果が期待できます。また、活性酸素による細胞へのダメージはがんや生活習慣病の大きな原因となるため、がんや生活習慣病の予防にも効果が期待できます。
- 血管の強化なたね油には血管を強化し血行をスムーズにする効果があり、心筋梗塞や脳卒中などの予防にも効果が期待できます。
- 腸の働きを助けるなたね油には腸の働きを助ける作用も期待されており、便秘の解消や腸内環境の改善にも効果が期待できます。
【特徴と使い方の例】オレイン酸の含有量は、この中ではオリーブ油に続いて2番目に多い量です。
代表的な植物油でさまざまな料理に使え、安価なので日常使いの油として使いやすいでしょう。
大豆油
【原料】大豆
【風味】独特のうまみとコク
【主な脂肪酸】リノール酸
【期待される効果】
サラダ油・キャノーラ油・オリーブオイルなどと比べるとα-リノレン酸やビタミンKが豊富に含まれています。
αリノレン酸は動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、LDLコレステロールを減らすなどの効果が期待できる栄養素です。
【特徴と使い方の例】大豆油には植物ステロールが含まれます。
大豆油はほかの油と調合してサラダ油として用いられることが多い油で、単独の大豆油は家庭用には一般的ではありませんが、独特のうまみとコクを味わえます。
各植物油の脂肪酸の比較
植物油に主に含まれるのは、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸などの不飽和脂肪酸です。
脂肪酸の種類により、特徴や期待される効果が異なります。脂肪酸の特徴、含有量の比較すると、
オレイン酸
オレイン酸は一価不飽和脂肪酸で、オリーブ油にとくに多く含まる脂肪酸です。
オレイン酸は、善玉コレステロールは減らさず、悪玉コレステロール値を下げる働きがあるといわれています。
リノール酸に比べると酸化しにくく、取り入れやすい点もメリットです。
リノール酸
リノール酸はオメガ6系脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)です。体内で合成されないため、食べ物から摂る必要があります。
悪玉コレステロール値が上昇する原因である飽和脂肪酸の代わりに、オメガ6系脂肪酸を摂取すると、悪玉コレステロール値が低下することがわかっています。
ただし、リノール酸はオレイン酸に比べると酸化しやすいため、過剰摂取により健康への影響が懸念されています。とりすぎるとエネルギーも過剰になりやすいため、適量とることが大切です。
α-リノレン酸
α-リノレン酸は、オメガ3系脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)です。α-リノレン酸は一部体内でDHAやEPA(青魚に主に含まれる脂肪酸)に変換される性質があります。
α-リノレン酸は善玉コレステロールを若干増やし、中性脂肪値を低下させる作用があるほか、心疾患のリスクを下げる作用があることもわかっています。
グラフからわかるように、α-リノレン酸は一般的に使われることの多い植物油にはさほど含まれず、アマニ油やえごま油といった一部の油にとくに多く含まれています。
将来、魚資源の不足などの恐れからα-リノレン酸の摂取が重要視されており、アマニ油やえごま油などの油に注目が集まっています。
最後に
いくら体によいからといって、油を必要以上にとってしまうと脂質の摂りすぎになってしまいます。
油は種類によるカロリーの違いはほとんどなく、大さじ1杯(12g)あたり106~108kcalほどです。
たとえば「なんにでもかけて食べる」という取り入れ方をすると、脂質を摂りすぎてしまい、カロリーオーバーしてしまいます。
プラスしてとるのではなく、あくまで今使っている油を置き換える形で取り入れるのがおススメ。
どれもスーパーで手軽に手に入るので、一度見比べてみるのもよいですね。毎日の料理に欠かせない油の特徴や使い分け方を知って、自分に合ったものを探してみませんか。
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