みなさんは、歴注(れきちゅう)という言葉を聞いたことがありますか。
暦注はカレンダーに書かれている日時や方位などの吉凶、大安や大凶などその日の運勢などさまざまな注意事項のことを言います。
今回紹介する「犯土」も歴注のひとつです。
「犯土」とはどのようなものなのでしょうか。調べてみました。
「犯土(大犯土・小犯土)」
犯土の読み方は「つち」または「ぼんど」です。
犯土とは、土を司るといわれている土公神(どこうじん・土の神様)が土の中にいるため、土をいじられると怒って祟りが起きる期間と考えられています。
土公神は土を司る神で、春はかまど、夏は門、秋は井戸、冬は庭にいると考えられており、季節ごとに居場所が変わります。
犯土の期間は土いじりをしてはいけません。また、季節ごとに土公神がいる場所の土いじりをすると祟りがあるといわれています。
犯土は「大犯土(おおつち・おおづち)」または「大土(おおつち・おおづち)」と、「小犯土(こつち・こづち)」または「小土(こつち・こづち)」のふたつの期間にわけることができます。
「犯土(大犯土・小犯土)」の期間にしてはいけないのは
●穴掘り●種まき●土木工事●伐採●土に関すること全般●地鎮祭などの建築に関する儀礼などです。
土に関係のない結婚や入籍などは問題ありません。
「犯土」と陰陽五行説
私たちが普段使うカレンダーは数字で日にちが書かれています。
これを数字ではなく干支(えと)に当てはめたものを「日の干支」といいますが、「大犯土」は、日の干支が庚午(かのえうま)から丙子(ひのえね)までの7日間を指し、「小犯土」は、戊寅(つちのえとら)から甲申(きのえさる)までの7日間を指し、この期間は土に関することは一切してはいけないとされています。
なぜこの期間に土に関することをしてはいけないかというと、陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)に基づいた考え方から来ているからです。
陰陽五行説とは「陰陽説(いんようせつ)」と「五行説(ごぎょうせつ)」合わさった考え方でそれぞれの説は以下の思想のことをいいます。
●「陰陽説」・・・この世のすべてのものを陰と陽に分類する思想
●「五行説」・・・万物は木、火、土、金、水の五種類の元素からなるという自然哲学の思想
先ほどカレンダーの日にちを数字ではなく干支(えと)に当てはめたものを「日の干支」と説明しました。
干支は「十干十二支(じっかんじゅうにし)」ともいい、
十干(じっかん)とは、甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、癸(き)のことで、
十二支(じゅうにし)は、子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(い)のことです。
五行説の考えから、十干にはそれぞれ「木」「火」「土」「金」「水」のどれかが割り当てられており、さらに、陰陽説の陽を表す「兄(え)」と陰を表す「弟(と)」が割り当てられ、以下のようになります。
甲(木(き)の兄(え))=「きのえ」
乙(木(き)の弟(と))=「きのと」
丙(火(ひ)の兄(え))=「ひのえ」
丁(火(ひ)の弟(と))=「ひのと」
戊(土(つち)の兄(え))=「つちのえ」
己(土(つち)の弟(と))=「つちのと」
庚(金(か)の兄(え))=「かのえ」
辛(金(か)の弟(と))=「かのと」
壬(水(みず)の兄(え))=「みずのえ」
癸(水(みず)の弟(と))=「みずのと」
十二支も五行説の考えから「木」「火」「土」「金」「水」が割り当てられており、以下のようになります。
子(水)・丑(土)・寅(木)・卯(木)・辰(土)・巳(火)・午(火)・未(土)・申(金)・酉(金)・戌(土)・亥(水)
これらの十干と十二支を組み合わせると以下の様に60の組み合わせが出来上がります。
組み合わせの順番は、1番目を「甲子(きのえね)」、2番目を「乙丑(きのとうし)」、3番目を「丙寅(ひのえとら)、4番目を「丁卯(ひのとう)」、5番目を「戊辰(つちのえたつ)」・・・と続き、「大犯土」の「庚午(かのえうま)」は7番目、「丙子(ひのえね)」は13番目になり、「小犯土」の「戊寅(つちのえとら)」は15番目、「甲申(きのえさる)」は21番目になり、60番目が「癸亥(みずのとい)」となります。
これを日に当てはめたのが日の干支で、60日で一巡します。
また、これらの60の組み合わせを「六十干支」ともいいますが、一番目から2つずつを一組とし(1番目の甲子と2番目の乙丑で一組、3番目の丙寅と4番目の丁丑で一組という具合)、五行に割り当てた30種類の組み合わせを「納音(なっちん)」といいます。
納音は以下のとおりになります。
干支 | 納音 | |
1 | 甲子・乙丑 | 海中金(かいちゅうきん) |
2 | 丙寅・丁卯 | 炉中火(ろちゅうか) |
3 | 戊辰・己巳 | 大林木(たいりんぼく) |
4 | 庚午・辛未 | 路傍土(ろぼうど) |
5 | 壬申・癸酉 | 釼鋒金(じんぼうきん) |
6 | 甲戌・乙亥 | 山頭火(さんとうか) |
7 | 丙子・丁丑 | 澗下水(かんかすい) |
8 | 戊寅・己卯 | 城頭土(じょうとうど) |
9 | 庚辰・辛巳 | 白鑞金(はくろうきん) |
10 | 壬午・癸未 | 楊柳木(ようりゅうぼく) |
11 | 甲申・乙酉 | 泉中水(せんちゅうすい) |
12 | 丙戌・丁亥 | 屋上土(おくじょうど) |
13 | 戊子・己丑 | 霹靂火(へきれきか) |
14 | 庚寅・辛卯 | 松柏木(しょうはくぼく) |
15 | 壬辰・癸巳 | 長流水(ちょうりゅうすい) |
16 | 甲午・乙未 | 沙中金(さちゅうきん) |
17 | 丙申・丁酉 | 山下火(さんげか) |
18 | 戊戌・己亥 | 平地木(へいちぼく) |
19 | 庚子・辛丑 | 壁上土(へきじょうど) |
20 | 壬寅・癸卯 | 金箔金(きんぱくきん) |
21 | 甲辰・乙巳 | 覆燈火(ふくとうか) |
22 | 丙午・丁未 | 天河水(てんがすい) |
23 | 戊申・己酉 | 大駅土(たいえきど) |
24 | 庚戌・辛亥 | 剣釧金(けんせんきん) |
25 | 壬子・癸丑 | 桑柘木(そうしゃくもく) |
26 | 甲寅・乙卯 | 大渓水(だいけいすい) |
27 | 丙辰・丁巳 | 沙中土(さちゅうど) |
28 | 戊午・己未 | 天上火(てんじょうか) |
29 | 庚申・辛酉 | 柘榴木(しゃくろうもく) |
30 | 壬戌・癸亥 | 大海水(たいかいすい) |
「犯土」は納音で土の日に当たる日を初日とし、4番目の路傍土(ろぼうど・(庚午・辛未))を初日とするのが大犯土、8番目の城頭土(じょうとうど・(戊寅・己卯))を初日にするのが小犯土です。
「大犯土」はいつ
4番目の路傍土(ろぼうど・(庚午・辛未))を初日とするのが大犯土です。
日の干支で庚午(7番目)から丙子(13番目)の間の7日間のことで、以下のとおりになります。
7番目「庚午(かのえうま)」
8番目「辛未(かのとひつじ)」
9番目「壬申(みずのえさる)」
10番目「癸酉(みずのととり)」
11番目「甲戌(きのえいぬ)」
12番目「乙亥(きのとい)」
13番目「丙子(ひのえね)」
「小犯土」はいつ
8番目の城頭土(じょうとうど・(戊寅))を初日にするのが小犯土です。
日の干支で戊寅(15番目)から甲申(21番目)の間の7日間のことで、以下のとおりになります。
15番目「戊寅(つちのえとら)」
16番目「己卯(つちのとう)」
17番目「庚辰(かのえたつ)」
18番目「辛巳(かのとみ)」
19番目「壬午(みずのえうま)」
20番目「癸未(みずのとひつじ)」
21番目「甲申(きのえさる)」
「間日(まび)」
「間日」とは、特に何もない日、悪い影響を受けない日とされており、大犯土と小犯土の間の14番目の「丁丑(ひのとうし)」は「間日」です。
犯土(大犯土・小犯土)の影響を受けないため、土いじりをしても問題ありません。
2020年の犯土(大犯土・小犯土)はいつ?
2020年の「犯土(大犯土・小犯土)」は以下の通りです。
大犯土 | 間日 | 小犯土 |
1月28日(火)~2月3日(月) | 2月4日(火) | 2月5日(水)~2月11日(火) |
3月28日(土)~4月3日(金) | 4月4日(土) | 4月5日(日)~4月11日(土) |
5月27日(水)~6月2日(火) | 6月3日(水) | 6月4日(木)~6月10日(水) |
7月26日(日)~8月1日(土) | 8月2日(日) | 8月3日(月)~8月9日(日) |
9月24日(木)~9月30日(水) | 10月1日(木) | 10月2日(金)~10月8日(木) |
11月23日(月)~11月29日(日) | 11月30日(月) | 12月1日(火)~12月7日(月) |
「犯土(大犯土・小犯土)」がどういう日かわかりましたか?
土の神様が静かに過ごせるよう、土いじりなどをしてはいけないということですので、他の日にできることは避けた方が良いのかもしれません。
しかし、暦注を気にしながら生活をするのはとても大変ですし、身動きができなくなるほど凶日が続くこともあります。
暦注は科学的根拠はないといわれていますので、参考程度にしておくといいです。
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